ただ寄付するだけではダメ! 企業の社会貢献にはコミュニティ投資という考え方が必要
今回の東日本大震災が発生するまで多くの日本人は忘れていたかもしれないが、アジアは世界的に見ても地震や津波、台風、火山噴火、洪水など自然災害が多発する地域である。国際災害機関(CIDI)の2008年の調査では、緊急時に行われた寄付金総額120億ドル(約1兆円)のうち、99%がアジアで発生した自然災害による被災者に向けられたものだった。もともとアジアは自然災害多発地域であり、日本も例外ではないのだ。
多くの日本企業はこれまで自然災害によるリスクの緩和よりも、自然災害発生時の緊急対応として寄付金や物資の送付を行ってきた。しかし、アジアで操業する企業の中には、アジアでは自然災害が多く発生することを十分理解しているゆえに、緊急時のためにあらかじめ寄付の金額や送付先を決めている企業も多い。
背景には、いったん災害が発生すると緊急対応にかかりきりになってしまい、他の業務の優先度が下がるために、効率が悪くなり、業務に支障が出てしまうことがあるからだ。地球のどこかで自然災害が発生するたびに、慌てて対応することは企業からすると、かえってコストの増加を招くことにもなる。アジアの企業は自然災害への緊急対応をあらかじめ予算や事業計画に組み込んでいるところも多い。
アジアでも日本でもそうなのだが、緊急時支援における企業による対応の評価は「いかに迅速に金額いくらの寄付をしたか」ということに注目されてしまいがちだ。確かに緊急時にはどこの企業がいくらの寄付金を送ったというニュースが飛び交い、一覧表にまでされて比較される。
しかし、企業による金銭的な供与にはどんな場合でも説明責任が付きまとう。これは、緊急時支援でも例外ではない。「送金して終わり」の単発的な対応ではないのだ。
企業が被災者向けに寄付金を送る場合、その相手先がどういう団体なのか、そのおカネが何に活用されるのか、それが本当に被災者のためになったのかを把握することが重要だ。なぜなら、使った資金についてステークホルダーに説明する責任が企業にはあるからだ。