安倍晋三首相の訪米は、安倍首相から見れば大成功に終わった。18年ぶりに日米防衛協力のための指針の改定が終了し、米国への後方支援の提供など日本の自衛隊の役割を拡大させた。米バラク・オバマ大統領は、日本の施政下にあるが中国が所有権を主張しようとした尖閣諸島が安全保障条約の適用対象であることを再確認した。日本の積極参加が必要な環太平洋連携協定(TPP)にも進展が見られた。安倍首相はさらに日本の指導者として初めて米議会上下両院合同会議で演説を行った。
このように立派な成果が並んでいるが、それでも安倍首相の訪米で最も印象的な部分は最後にやってきた。公的行事が終わった後もすぐに帰国せず、首相はシリコンバレーを含む4日間の滞在のためカリフォルニア州に向かったのである。
アジア諸国が日本を密かに応援している理由
日本のメディアの報道によれば、安倍首相のカリフォルニア訪問の目的は、シリコンバレーで得た知見を本国へ持ち帰ることにあった。しかしカリフォルニア滞在はまた、強いメッセージを送ることともなった。優雅な衰退は日本にとって事前に決められた道ではない、ということだ。安倍首相のリーダーシップの下で、日本は経済改革に必要な対策を取っていくことになるだろう。米国がこれまで何度も行ってきたように、である。
実世界の展開を形作るという期待は戦略的判断や政治的判断に影響を与えることから、この戦略は理にかなっている。安倍首相は、今後のアジア経済は中国のものだという今日の支配的なナラティブに挑戦しなければいけないことをわかっている。もし首相が失敗したら、地域の諸政府間に地政学的観点から中国と協調せざるをえないという圧力が高まることになり、それらの諸国が中国の指示に従って自由より繁栄を優先する可能性すら出てくる。
現時点においては、東アジア諸国のほとんどが、安倍首相が成功してくれることを望んでいるようだ。実際これらの国々は日本が中国の台頭の拮抗勢力として不可欠であるとして、用心しながらも日本を応援してきたし、それは無理もないことでもある。中国の地域における経済的重要性は過大評価されがちだが、日本は過小評価されることが多い。
現実には、中国のアジア内部での貿易の大半は、日本を含む先進国に親会社を持つ企業によって行われている。また、ダイナミックな成長市場という中国の評判にも関わらず、日本の消費者はまだ中国の消費者よりはるかにお金を持っている。つまりそれは、日本が地域の輸出依存経済を支えるのにより大きな役割を果たしている、ということである。
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