安倍首相の演説、米紙はどのように報じたか 45分間に及んだ「歴史的演説」の突破力

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米議会で演説を行う前に拍手で迎えられた安倍晋三首相(Stephen Crowley/The New York Times)

安倍晋三首相は上下両院合同会議において、日本の首相として初めて演説を行った。自国の経済改革が「めざましい進歩を遂げた」ことをたたえたが、懐疑的な米国の議員たちに遠大な環太平洋連携協定(TPP)支援を求めるうえで、具体的な譲歩を表明することはなかった。

安倍首相が演説した米議会はTPP交渉の妥結に向け、バラク・オバマ大統領に超党派の貿易推進権限(TPA、ファストトラック権限)を付与するかどうかで意見が分かれている。民主・共和両党の議員たちは、貿易交渉で未解決となっている最大の問題のひとつである、日本の農業と自動車市場を解放することにおいての安倍首相の力量に懸念を持っているのだ。

日米トップに立ちはだかる障壁

実際のところ安倍首相は、公約以上の具体的な譲歩を表明しなかった。「日本の農業は転換点にある」と述べた上で、女性の権利や企業統治の進展についても触れながら安倍首相はこう言った。「農業が生き残るためには、今こそ変わらなければならない」。

しかしながら、安倍首相がもっとも強く要請したのは、日本や豪州からカナダ、チリに至るまでの協定交渉国との連携による地域内の安全保障強化や、繁栄である。

「TPPは単なる経済利益をはるかに超えるものである」と述べた上で、「私たちの安全保障問題にも関わる。長期的にはこの戦略的価値は大きい。私たちはそれを忘れるべきではない」と主張した。また、「私たちはこの地域を、平和と繁栄が永続する地域にしなければならない。私たちの子供や孫のために」とも付け加えた。

安倍首相とオバマ大統領にとって、それぞれの“功績”を残すためにTPPの重要性は増しているが、以前にも増して米議会の承認を得るのは難しくなっている。民主党議員のほとんどは、ファストトラック権限を大統領に付与することに、断固として反対の立場をとっている。

4月29日には、下院投票権を持つ共和党リーダーであるスティーブ・スカリス下院議員(ルイジアナ州)が、共和党票のみでこの権限付与が下院を通過することはないだろう、とほのめかした。「民主党票を取り込もうとする政府の対策が十分ではないように思える」(同議員) 。

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