中国を含むアジアの新興国は、外国の資本と技術革新、つまり日本のような先進国が提供するものなしには、その能力を発揮することができない。東南アジアの経済大国のすべて、また東南アジア諸国連合(ASEAN)全体においても、日本は中国よりはるかに多くの外国直接投資を行っているし、日本の大手企業でグローバルプレイヤーの三菱グループやソニーは、アジアを発展させるための技術やノウハウの伝達を中国企業よりもずっと多く行っている。
確かに中国は追いつこうと頑張っている。政府も、国の成長モデルの発展には起業精神と技術革新が不可欠であると見極めている。だが、次世代コンピューターシステムやエネルギーシステムといった新たなセクターにおける最新技術や、ロボティクス、3D印刷といった分野の製造開発に関しては、日本がかなりリードしていることを軽視すべきではない。
中国はより困難な課題に直面する
しかし日本も、優位を失わないためにはさらなる努力をせねばならない。それはすなわち貿易関係の自由化といった困難な構造改革を行わねばならない、ということだ。幸いにも安倍首相はこれが不可避なことであると認識しているし、日本経済の再活性化に向けた首相の戦略の第三の矢は、これを(特に農業などの保護されている分野の門戸をより広く国際競争に向けて開くことと共に)正式な目標として定めている。
アベノミクスの構造改革が成功する保証はもちろんない。確かなのは、中国がより困難な課題に直面するということだ。政治経済を改革するだけでなく、立て直さねばならない、という課題だ。30年の間に急速な経済成長を遂げたにも関わらず、中国はまだ冷戦時代の制度的ハードウェアの上で機能している。先進諸国で起こっているような大型改革には、法の支配、知的財産権、さらに、国が好む企業ではなく最も相応しい企業が成長に必要な資金や機会にアクセスできるような、本当の意味での能力主義を保証する制度が必要だ。その意味で中国の道のりはまだ長い。
日本がアジアの将来の経済秩序を形作る競争から外れたことは一度もない。今後数十年の東アジアのパワーバランスを定めていくのに、日本は戦略的にも非常に重要な役割を果たしていくことになる。安倍首相の最近の訪米は、日本がアジアの中心であることを確認する上で重要な役割を果たした。
世界が日本の第二次大戦敗戦70周年記念の準備を進めている中で、米国政府やアジア大国のほとんどすべての政府が密かに安倍首相を応援しているのは、いささか皮肉なことではある。今回の日本の取り組みは、アジアやそれ以外の地域に広範囲に及ぶ利益をもたらしてくれる、と期待できる。
(C)Project Syndicate
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