「留学すれば何とかなる」は、100年時代遅れ グローバル人材が本当に大切にするべきこと

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優秀な選手だった谷沢君は、基礎を重視する安西先生の厳しい指導に嫌気が差し、自分のやるバスケはここではなくアメリカにある、アメリカに行けば自分の「才能」は開花すると考え、日本を飛び出した。思いどおりに渡米したはいいが、現実は思い描いていたようにうまくはいかず、彼は悲劇的な結末を迎えることとなった。

アメリカに移った谷沢君から安西先生へ宛てた手紙に、こんなことが書かれていた。「いつかの先生の言葉がちかごろ頭に浮かびます。(中略)バスケットの国アメリカのその空気を吸うだけで僕は高く跳べると思っていたのかなあ……」。

場所を変えるというだけでは、何にもならなかったのだ。安西先生は谷沢君を指導する中で、目の前にある取り組むべきものを示していた。『SLAM DUNK』はフィクションだが、示唆に富むエピソードだ。日本にいても、留学しても、やるべきことの本質は変わらない。

縫製工場で4時間! 黙々と糸を切り続ける

さて、少し話が変わるが、実は、3月から4月中旬にかけて、イースター休暇のため日本に帰ってきていた。毎度そうしているのだが、帰国中は私の実家がある鹿児島で研究・仕事を進めながら、温泉やご飯を満喫して過ごす(下戸であるため焼酎の恩恵は受けられない)。

そんなある日の夜、父から呼び出された。今年70歳になる父は、創業60年ほどの縫製工場を経営している。いつもは夜7時には家に戻るのだが、この日は帰りが遅れていた。取引先にちょっとしたトラブルがあり、それを父の会社ですべて引き受けるということだった。

「従業員の皆さんへの差し入れを持って来い!」

糸切り。このように出ている糸をひとつひとつ取っていく(撮影:筆者)

そこで、買い物を済ませて向かってみると、夜も遅くに工場はフル稼働しているところだった。なかなか大変な状況の中、父も身をかがめて作業していたが、「お前も手伝え!」と。私は最後の仕上げの「糸切り」という作業をすることになった。布が縫われて服になった後、取り残した糸や玉留めから伸びた糸を処理するのだ。最終チェックも兼ねているので、時間がかかる。ひたすら続く単純作業。昔は夏休みのちょっとしたアルバイトとして工場を手伝っていたのだが、久しぶりの感覚だった。

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