しかし、これはまったく定着することはありませんでした。この現象について三省堂国語辞典編集者の飯間浩明氏は毎日新聞の紙面で、「横柄なイメージだった国鉄が民営化した途端に言い出したので、『何がE電だ』という反感が強かったのではないか」と分析しています。
強引な買収、その後の大胆なリストラやサービス内容の変更などで戸惑うユーザーには、今回のX騒動は、E電に対し飯間氏が指摘したものと似た感情が一定数あったのではないかと思います。マスク氏が今後もユーザーの声を聞かないと、E電の轍を踏むこともあるかもしれません。
日本人にとってSNS投稿は「ハズい」こと?
前置きのつもりで書いたことが長くなってしまいました。
本題に入りますと、実は日本人のツイッター好きは他国の追随を許しません。2023年7月にマスク氏自身が投稿した1週間に何秒間ツイッターを利用したか(Total Active Second)の国別の数字では日本は687.2億秒で、お膝元のアメリカ560.9億秒を抑えて1位でした。
日本人のツイッター利用が進んだのにはその匿名性が関係あるのではないかと思います。私の日本人の知人の多くはツイッターで実名を名乗っていません。あるいは実名のほかに「裏垢(裏のアカウントのネットスラング)」を持っているようです。裏垢を持っている理由は、無論犯罪を助長するような投稿をするためではなく、要するに
「人目を気にせず投稿できる」
ということではないかと思います。変な投稿をするつもりがなくても裏垢を使うのは「かっこいいことを言うと厨二っぽくてハズい」「いいことを言うと意識高い系でハズい」と、とにかくなにからなにまでハズかしい、という感情がつねについてまわるのではないかと思います。
1946年にアメリカの文化人類学者 R・ベネディクトが書いた『菊と刀』(The Chrysanthemum and the Sword)で指摘した「恥の文化」がここにもまだ生きているということでしょうか。
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