映画「オッペンハイマー」広島の被害描かない疑問 原爆被害のリアルが世界に伝わらないジレンマ
先月21日にアメリカなど各国で公開されたクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が、大ヒットしている。“原爆の父”として知られるJ・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画で、上映時間は3時間、観客の年齢が限られるR指定であるにもかかわらず、興行収入はすでに4億ドルを超えた(日本での公開は未定)。
シリアスな映画が苦戦しがちな近年、これだけの数字を叩き出せるのは、さすが全世界にファンを持つノーランならではだ。シネマスコア社による観客の評価は「A」と、満足度も高い。
R指定の理由はバイオレンスではない
だが、一部からは疑問の声も聞かれる。原爆を作った人の話であるのに、広島、長崎の被害の状況がまるで映し出されないのだ。筆者もそこは意外に感じた。日本で公開が決まっていなかったり、大人向けのR指定を受けたりしたのは、被爆地の恐ろしい状況が描かれるからではないかと思っていたのだ。
しかし、ストーリーの中で原爆が落とされた後も、カメラはそこには向かない。オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)がスライドで現地の様子を見せられるシーンも、カメラはオッペンハイマーを映し、スライドは見せないのである。
R指定になったのは、バイオレンスではなくセックスが理由だ。オッペンハイマーとの情事のシーンで、相手役のフローレンス・ピューがトップレスになるからだ。
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