「伊藤詩織映画」なぜ日本と海外で反応が違うのか 知らされていない事実とアカデミー賞候補入りの評価ポイント

アカデミー賞授賞式が目の前に迫った。今年は長編ドキュメンタリー部門に伊藤詩織監督の『Black Box Diaries』が候補入りしている。はたして受賞の可能性はいかほどのものか?
許可を得ていない映像が使用されていることを、かつて伊藤氏と共に闘った弁護士が問題視し、日本で論議になっていることに関して、実は海外ではほとんど知られていない。
望月衣塑子記者を訴訟したことも、そこまでの経緯も、知られていない。また、問題の映像として挙げられているのはホテルのセキュリティカメラのみで、本人の許可が取れていないいくつかの部分については触れられていない。
最近、業界サイト「Deadline」が、この映画の日本公開が決まっていないことについて取り上げたが、コメントをしているのは伊藤氏と映画のプロデューサー。日本公開を求める署名運動がフランスで起きて一部で盛り上がっていることにも触れられており、日本の劇場の勇気のなさを指摘する、伊藤氏寄りの視点だった。
現地時間2月17日午前7時に出たこの記事は、映画に対して考え直すこともさせなかった一方、応援票を集める役目も果たしていない。この日はオスカー投票の締切日。しかも締切は山火事を受けて当初より延期されたもので、多くの人は何の疑問もなく映画を見たうえで、すでにどれに入れるか決めていたと考えるのが妥当である。
脆さを見せるパーソナルなシーンが登場
では、そこまでにこの映画に票を入れた人は、どこを評価したのか。また、昨年1月のサンダンス映画祭でお披露目されたこの映画は、1年もの長い間、競争を乗り越えつつ、どうしてここまで来られたのか。
「#MeToo」運動が勃発した2017年秋以来、性暴力は世界的な関心事で、重要な問題だ。伊藤氏が自ら監督を務め、自分自身が受けた被害を検証するこの映画には、彼女が脆い部分を見せる、とてもパーソナルなシーンが登場する。
たとえば、映画の前半では、「どんなに辛くても自殺などしない、もし自分が死ぬようなことがあれば疑ってかかってほしい」と言っているのに、後半には自殺を考え、泣きながら両親に向けてお別れのビデオメッセージを録画するシーンが出てくるのだ。
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