年を取って「記憶力低下」を嘆く人が知らない真実 老化へのステレオタイプが記憶に影響を与える

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ある研究では、老化に関するステレオタイプが記憶力に与える影響を調べるために、62歳から84歳の高齢者と18歳から30歳の若年者に、3種類の偽の新聞記事のうち、1つを読んでもらう実験を行いました。その記事の1つは、典型的な老化による記憶力の低下を強調しており、高齢者は他人に頼る必要があることを示唆するものでした。このような内容です。

このような研究結果は、老化が心的能力にネガティブに影響するという考えを強めるものですが、研究者は、それは必ずしも高齢者が日常生活を送れなくなることを意味しない、とも述べています。しかしながら、これらの知見は、高齢者が十分な機能を維持するためには、友人や家族だけでなく、記憶装置の助けを借りなければならなくなる可能性があることを示唆しています。

別の記事では、記憶と年齢の関連について、もっとポジティブな知見が強調されているものでした。

このような研究結果は、老化が心的能力にネガティブに影響するという考えを弱体化するものです。これらの研究結果は、生物学的な変化が必然的な損失をもたらすという考えを支持するのではなく、記憶力の低下はある程度、環境と個人の力でコントロールできる、ということを示唆しています。

ネガディブ記事を読んだ高齢者の成績は悪かった

3番目の中立的な記事は、記憶と年齢の関連についての具体的な情報は含みませんでした。研究参加者全員が、30個の単語のリストを2分間学習した後、覚えている単語を書き出すという標準的な記憶課題に取り組みました。

実験の結果、どのような新聞記事を読んだのかには関係なく、若年者は比較的良い記憶成績を示すことがわかりました。平均すると60%の単語を記憶しており、記事内容による記憶成績の違いは示されませんでした。

高齢者を対象に行った実験の結果はどうだったでしょうか。想像できるかもしれませんが、老化が記憶に与える悪影響を強調した記事を読んだ場合、記憶成績が悪化しました。具体的には、中立的、あるいはポジティブな記事を読んだ高齢者は、57%の単語を思い出したのに対し、ネガティブな記事を読んだ高齢者は44%しか思い出すことができませんでした。

この研究は、記憶に関する1つの記事を読むことが、その後に高齢者が受ける単純な記憶課題の成績に影響する可能性を示しています。このようなステレオタイプをつねに耳にしていると、現実世界ではどのような影響があるのかを想像できるのではないでしょうか?

そして、そのようなステレオタイプ自体が、高齢者の記憶パフォーマンスの低下につながる可能性があるということもおわかりいただけるのではないでしょうか? これは、私たちのマインドセットのパワーを示す、はっきりとした例です。

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