より効率の良いシステム管理の方法を委託先と検討していると、不要な作業や発注方法に問題があることがわかった。その問題を解決することで委託先の品質が改善し、信頼関係を築いた。本質的な解決に導けたことに手応えを感じていたが、「どっちの味方なんだ。厳しく取引先を管理しろと言っただろう。言われたことをやってない」と上司から怒られた。
がんばった時ほど「頭が悪い」
自分のアイデアや課題を解決するための踏み込んだ思考をもとに主体的に動くと、上司や先輩たちの考えと合わなくなり、低評価を受ける。「人の気持ちが理解できない」「思考能力がない」「自分の頭が悪いことを受け入れろ」とののしられることもあり、体調が悪化。休職した。経緯を聞いた重役と他の上司からは「あなたのような人材が会社に必要だ」と言ってもらえた。嬉しい半面、「だったら、なぜ守ってもらえないのか」という悔しさも入り交じった。
上司と吉沢さんの間には、見えている視点や仕事のやり方に大きな違いがあった。吉沢さんには、保身のためにやり方を変えようとしない上司の思考が見て取れた。一方で、上司や周囲の人には、会社やグループ企業全体のことを考えて提案する吉沢さんの考え方は理解できなかったのかもしれない。
吉沢さん自身は、上司や同僚と衝突するたびに悩んだ。「自分は正しいことをしているはずという思いと、自分ができないから悪いんだという葛藤をずっと続けてきた」という。自分の能力を発揮できたと感じた時ほど「頭が悪い」「使えない」と批判された。既存の方法にとらわれずに効率の良い方法を考えようとすると、受け入れてもらえない。そんな思いがずっと頭をめぐった。
休職した時には、産業医にも相談へ行ったという。すると5分も話さないうちに「あなたはきっと境界性パーソナリティー障害で、人に興味のない人格障害」と言われた。それをかかりつけ医に相談すると、精神科病院への入院を勧められた。その診断に納得できず、外部の心理検査を受診。周囲とのなじめなさの原因は、境界性パーソナリティー障害などではなく、吉沢さんのIQの高さにあると判明した。
仕事場でも、医師からも、自分の人格や能力を否定されることを言われ続け、自分を支えることが難しくなってきた吉沢さん。このころには、趣味の音楽でイベントを開催してなんとか自分を保っていた。計画的に人をまとめて動かすのは得意だったため、手応えも感じていた。多くの人に楽しんでもらえる場を作れることに、喜びを見いだしていた。しかし、心身への負担も大きく、酸素が足りないなか、海面でもがくような感覚だったという。(後編に続きます/※吉沢さんの年齢は2023年3月時点のものです)
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