ビッグモーター、「社長のLINE流出」必然だった訳 「現代的な広報センス」の欠如は今やリスクだ

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(2)送信時刻は適切だったのか

兼重社長によるLINEメッセージは、朝7時に送信されたという。「店長クラスは、昼夜を問わず、会社のことを考えるべきだ」との意見もあるだろうが、一般論としては「今回のメッセージ程度であれば、一刻を争うものではない」と見る向きが多いだろう。

ちなみに参考までに、ビッグモーターの中途採用サイト(現在は閉鎖)に載っていた「営業社員の1日」を見ると、朝9時からの環境整備(清掃)を経て、9時30分スタートの朝礼で予定・課題を共有するところから、日々の仕事が始まることになっている。

(3)なぜ、このタイミングで「流出しない」と判断したのか

ビッグモーターの保険金不正をめぐっては、1年ほど前から疑惑が報じられており、LINE流出前日に国土交通大臣が「言語道断」と触れたことで、ついに隠しきれなくなっていた。メディア各社が追いかけるなか、当然ながらグループLINEに「内通者」が潜んでいても不思議ではない。

公式サイトの店舗一覧によると、ビッグモーターブランドは全国263店舗。すべての店長と、強固な信頼関係が築かれているのであればまだしも、これを機に「膿を出し切りたい」と考えているスタッフもいたのではないか。

従業員を信じすぎていたのか、それとも「社員教育」が徹底されているとの自信が強かったのか。はたまた、騒動の規模を見誤っていたのか——。いずれにせよ、タイミングも内容も、「いま送信したら流出して、炎上するに決まっている」としか思えないものだった。

企業トップのメッセージは会社に大きな影響を及ぼす

企業トップからのメッセージは、ときに企業ブランドを高め、社内外にファンを増やす武器となる。一方で、ひとたび使い方を誤ってしまうと、現場社員の足を引っ張ってしまうこともある。筆者が以前、当サイト(東洋経済オンライン)のコラムで紹介した事例を、ちょっとおさらいしてみよう。

たとえば、スシローで迷惑客による「醤油ペロペロ」が話題になった直後、運営会社の社長が、ツイッターでメッセージを投稿した。スシロー公式アカウントは、それまで基本的に商品紹介目的で使われていたが、突然の「社長登場」にポジティブな反応が寄せられた。

(参考記事:スシロー、寿司テロ騒動後に社長が見せた「巧さ」

ドン・キホーテの公式キャラクター「ドンペン」が、新キャラに交代されると発表した際の、ドンキ社長ツイートも話題になった。「私も事情がわからず関係部署に確認します」「あんまり権限ないんですw」などと、硬軟取り混ぜながら経緯説明したことで、消費者にプラスのイメージを与えた。

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