ビッグモーター、「社長のLINE流出」必然だった訳 「現代的な広報センス」の欠如は今やリスクだ

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反対に、ネガの印象を与えてしまったのが、焼肉ライク社長のツイートだ。一般ユーザーからの「スーパーで買った肉を家のフライパンで焼いた方が安い」との投稿に「イラッとしました笑」と反応。設備や人件費といった諸経費を念頭に置いた発言だったのだが、「思っても、言わないほうがいい」などと非難が殺到し、社長はツイッターの更新を止めた。

(参考記事:焼肉ライク、社長が炎上後にとった「最大の悪手」

これらの発言は、いずれもSNS上でのもので、公開を前提としたものだ。意図せず(予測はできたはずだが)流出してしまったビッグモーターとは、ちょっと事情が異なるが、「発言がどう受け取られるか、考えるべき」といったポイントは通底している。

求められる、「誠実に公開」の姿勢

これまで兼重社長はあまりメディア露出しておらず、また非上場企業のため、株主総会で一般消費者の矢面に立つこともなかった。保険金不正をめぐっても、調査報告書がリークされても、公式発表どころか各社取材にも応じず、なかなか会見を開く様子もない。

世論から「公式発表」が渇望されている現状で、もし閉ざされた空間でのみ語るはずだった「本音」が拡散されれば、どんな未来が想定されるか——。案の定、コンプライアンス意識やリスクマネジメント体制に、さらなる疑念のまなざしが向けられている。

ビッグモーターは、これまでテレビやラジオにCMを大量出稿し、その知名度を高めてきた。マス向けのコミュニケーションは長年経験があったため、どこか「メディアは使ってなんぼ」的な価値観があったのかもしれない。LINEの文面からも、どこか「これだけお金を落としてきたのに、なぜ急に手のひらを返すのか」といったショックを読み取れなくもない。

しかし、SNSの普及によって、「情報の消費」は大きく形を変えた。CM大量出稿はキッカケにはなるが、いかに日常に溶け込ませるか、親近感を覚えさせるか……といった点において、ネット上での広報戦略は、無視できないウエイトを占める時代となっている。

流出してしまったものは仕方がない。むしろこれを糧に、メディアの先手を打って「できるだけ早く、そして誠実に情報公開する」方向に、舵を切れるか。それが今後の立ち位置を左右することになるだろう。

城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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きど・ゆずる / Yuzuru Kido

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ジェイ・キャストへ新卒入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長などを経て、2022年秋に独立。現在は東洋経済オンラインのほか、ねとらぼ、ダイヤモンド・オンライン等でコラム、取材記事を執筆。炎上ウォッチャーとして「週刊プレイボーイ」や「週刊SPA!」でコメント。その他、ABEMA「ABEMA Prime」「ABEMA的ニュースショー」などネット番組、TOKYO FM/JFN「ONE MORNING」水曜レギュラー(2019.5-2020.3)、bayfm「POWER BAY MORNING」などラジオ番組にも出演。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
X(旧ツイッター):@zurukid
公式サイト:https://zuru.org/

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