ビッグモーター、「社長のLINE流出」必然だった訳 「現代的な広報センス」の欠如は今やリスクだ

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拡散されたスクリーンショット画像によると、兼重氏は、全社員の2%に満たない一部のBP(板金塗装)従業員による「過去の不祥事」だとしつつ、「世間の関心を集めるために、会社全体の組織ぐるみだと決めつけて報道」されていると指摘。

また「今回の件には一切関係ない、店舗とサービス向上の写真」を使って報じていると、メディア批判とも取れる内容が書かれていた。なお調査報告書によると、ビッグモーターグループの従業員数は2021年9月時点で5324人、うちBP部門は620人(11.6%)とされている。

【2023年7月25日9時44分追記】初出時、数値に一部誤りがあったため、上記の通り修正いたしました

ビッグモーターの調査報告書
報告書によるとBP部門の社員は約12%いたそうで、兼重氏のLINE文言とは微妙に違っている/出所:ビッグモーター調査報告書

メッセージは、その日の夜には「炎上系」と呼ばれるインフルエンサーによって拡散され、ネットユーザーの注目をあびた。マスメディアも追随し、産経新聞は7月20日夜、関係者からLINE文章を入手したと報道。その後、取材に対してビッグモーターが事実関係を認め、「不適切な内容が含まれていることについて猛省」しているとの回答を得たと報じている。

LINEメッセージにはさまざまな問題点

今回のLINEメッセージ、内容はもちろんながら、送信に至るまでのプロセスにも問題点が多々ある。いくつも指摘できそうだが、筆者は以下の3つがまず頭に浮かんだ。

(1)重要事項を共有するツールとして、LINEは適切だったのか
(2)送信時刻は適切だったのか
(3)なぜ、このタイミングで「流出しない」と判断したのか

では、ひとつひとつ見ていこう。

(1)重要事項を共有するツールとして、LINEは適切だったのか

コロナ禍によって、チャットツールが活用されるようになった。SlackやMicrosoft Teams、Chatworkなどなど、各社サービスが競い合っている状況で、LINEも企業向けサービス「LINE WORKS」を提供している。ただ、今回流出したスクリーンショットは、見たところ通常版の「LINE」と推測される。

調査報告書にも兼重氏(報告書では「A社長」と表記)らが、LINEでやりとりしていた描写があり、以前から業務連絡ツールとして常用されていた可能性は考えられる。しかし今回のように、会社全体の士気を左右しかねない重要な内容であれば、時系列順で流れてしまうLINEよりも、メールなどのほうが無難だったのではとも感じられる。

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