「水産物検査」が突き付けた中国依存の落とし穴 すでに在庫増加の影響、稼ぎ頭のホタテに不安

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水揚げされたホタテは冷凍貝柱や干し貝柱に加工して出荷する。冷凍はマイナス40度の急速冷凍だ。干し貝柱の加工期間は天日干しなど40日間に及ぶ。こうしたプロセスを経た加工ホタテは、輸出にも回される。

人口約2700人の猿払村の年間予算(一般会計)は約54億円。漁協の取扱高年間100億円超のホタテ漁の存在感は歴然だ。村役場の担当者に今回の影響について聞いてみたが「今のところ漁組(漁業組合)さんからもそういった話はなく、輸出も中国だけではないのでそう大きな影響はないのではと受け止めています」とのことだった。事態が長期化、悪化しないことを願うばかりだ。

中国依存からの脱却、輸出先分散がカギ

今回の中国側の対応について松野博一官房長官は規制の早期撤廃を求めていく考えを強調したが、そう簡単に応じる国ではない。政治的なリスクが高い国への輸出、あるいは当該国からの輸入の割合、依存度が高くなりすぎると、今回のような事態に対応しきれない。

中国向けのホタテ輸出はコロナ禍でも大きな打撃を受けた。中国国内の行動規制などの影響で、2020年の2月には、ホタテを含む甲殻類、軟体動物の函館税関からの輸出が5割以上落ち込んだこともあった。

ただ、ホタテの中国向け輸出が増えたのはここ数年のことだ。

「かつてはホタテの輸出先トップといえばアメリカでした。中国がトップになったのは2015年以降です。中国国内のホタテ需要に加え、中国の業者が日本産を輸入して、それを加工してアメリカに輸出するようになったからです。つまり、アメリカにおける日本産のホタテ需要はいまだに大きなものがあり、今後、中国向け輸出がストップすれば、自然とアメリカ向けにシフトしていく動きが出てくるはずです」(道内の水産関係者)

政治的な要因で価格が下がったのでは、生産者や加工業者はたまらない。日本政府は農林水産物の輸出額を2030年に5兆円にするとの大風呂敷を広げて、輸出拡大一辺倒の政策を取ってきたが、それだけでは不十分だ。貿易相手の分散化、リスク管理の徹底、リスク発生時の迅速な対応によって生産者、加工業者をいかに守るか。政府にはきめ細かな対応が求められる。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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