「水産物検査」が突き付けた中国依存の落とし穴 すでに在庫増加の影響、稼ぎ頭のホタテに不安

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中国向けホタテ輸出の6割超が北海道産である。道産ホタテの2022年の輸出額は前年比41.6%増の596億円と過去最高となった。北海道全体の水産物生産高に占めるホタテの構成比は約3分の1。サケやサンマ、イカの不漁が続くなか、ホタテは北海道にとって稼ぎ頭なのである。

今回の中国側の措置は、名目は全面的な放射線検査という検査強化だが、水産物は鮮度が命だけに、冷蔵品で2週間、冷凍品で1カ月という長期間の税関留め置き措置は、事実上の禁輸に等しい。

すでにチャイナリスクの影響

ホタテ輸出の事情に詳しい水産関係者に話を聞くと、すでにさまざまな影響が出始めているという。

「中国の税関当局の対応が強化されたということで、輸出をしにくい状況になっています。そのため在庫が増え、市況に影響が出始めています。昨年の同じ時期に比べると2、3割ほど下落していますね。この価格下落で国内消費が増えればいいのですが、どうなりますか」(道内の水産関係者)

北京など中国国内の日本食料理店では、ホタテやブリなどの入手がままならず、日本産をあきらめるケースが出ているという。逆に、日本側の業者が輸出を断念するケースも散見される。

生産地の状況はどうなっているだろうか。水揚げ量日本一に何度も輝いた日本有数のホタテ生産地で、「東京都区部と並ぶ平均所得を誇る村」として知られるオホーツク海に面した日本最北端の村・猿払村。

2022年の猿払村漁協の取扱高は128億4100円で過去最高となった。そのうちホタテが106億7700万円を占めている。猿払漁協では4月から5月上旬にかけて毎年、約2億5000万枚の稚貝を放流し、海の中で4年間育てる。漁のシーズンは3月中旬から11月末。最盛期は6月から8月というから、今がまさにピーク時だ。

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