【前編】トラブル続出「定年後再雇用」のQ&A 勤務態度悪い社員は再雇用しなくていい?
また、継続再雇用の更新上限を65歳に設定していても、実際にはそれを超えて(たとえば70歳、72歳まで)更新している実態があると、「なぜ私は65歳までなのか? 他の人は70歳まで更新しているのに」など、65歳以上の雇用継続の期待の有無に関し、紛争になることもあります。
そのほか、徐々に体力の低下や健康状態の不安が生じたため、更新時にそれまでと異なる契約内容を提示したところ、「急に契約内容を変えられても困る。これまでと同じ条件で更新してもらいたい」など、更新時の契約内容変更の可否をめぐって紛争になることもあります。
以下、トラブルが生じがちなポイントについて、対応策とともに解説します。
再雇用契約締結時の労務トラブル対応
【Q-1】
半年後に定年(60歳)を迎える社員がいます。当然、定年後再雇用を希望するものと考えていましたが、周囲には「定年になったら会社を辞める」と話しているようです。本人が再雇用を希望しないのなら、定年後再雇用はしなくてよいでしょうか。
【A-1】
定年後再雇用も雇用契約である以上、労使双方が雇用契約を締結する意思があることが前提になります。したがって会社側の意向にかかわらず、労働者側が再雇用を希望しない場合、雇用契約は成立せず、定年退職で雇用契約は終了になります。
そのため定年前に、会社は本人に対して定年後再雇用の意思があるかどうかを確認します。意思表明の期限に法律上の制限はないのですが、あまりに締切りが早すぎると高年法の趣旨を没却していると指摘される可能性があるため、定年の3〜6か月前に面談などで確認するのが一般的です。
また、定年直前に「やっぱり再雇用を希望します」といわれることを防ぐために、再雇用の希望がないと回答した労働者には、確認書等で「定年後再雇用を希望せず定年退職します」といった旨を明記した文書を取り交わしておくのが安全でしょう。
「意向確認」だと、「そのときはそういう意向だったが、意向が変わった」という主張が考えられるので、定年の約3か月前には正式に再雇用の意思の有無について意思表示してもらったほうがよいと考えます。