人生100年時代に、身ひとつ軽やかに最期を迎えるための心構えを、『最期はひとり 80歳からの人生のやめどき』から一部抜粋・編集のうえ、お届けします。
樋口:上野さんはお墓はどうなさるの?
上野:実家の墓が遠いので、兄が少し前に墓を移転したんです。それで新しく墓開きをした。その際、兄はわたしにいっさいの金銭的負担を要求しませんでした。だから、お前はお前で考えるようにということとわたしは解釈して、そのようにエッセイに書いたところ、何かの拍子にそれを読んだ兄から「俺はこんなことは言ってない。お前も入れてやる」と連絡が来た。でも、わたしはお墓に興味がないんです。
樋口:入れてくれるって言うなら、そこに入ったほうがいいわよ。
上野:そんな見知らぬ墓に自分の骨があるというのもあまり気持ちよくないし、わたしは遺書に「散骨してください」と書いてあります。もちろん、散骨場所も指定して。時々、沖縄の美ら海に散骨をとか依頼する人がいるけど、そんな面倒なことは頼みません。近場でオーケーです。樋口さんは、パートナーの遺骨を散骨するのは忍びないですか?
樋口:結構面倒くさいらしいし、こちらの体力も衰えているもので。
上野:簡単ですよ。行った先の海とか山に少しずつ撒けばすみますから。散骨許可を得るとか、ややこしく考えなきゃいいんです。
樋口:ちなみに、上野さんは散骨場所としてどこがご希望?
上野:京都の大文字山の「大」の字に点を打つと「犬」という字になる場所があるんです。そこにわたしの死んだペット(愛鳥)を埋めました。だから、自分の灰もそこに撒いてほしいですね。散骨に関しては昔から友だちに頼んであって、そのくらいならやってもらえると思います。遺書も数年に一度バージョンを変えてます。人間関係も変わるし、男も変わりますから(笑)。
恨み・つらみは丸めて棚上げ
上野:和解したいとか謝罪したいとかいう相手はいます?
樋口:謝りたい人? あまりいないわね。謝らせたいのはいるけど(笑)。でも、もういいの。それは許すことにしたの。もう、みんな好き、と自分に言い聞かせてます。
上野: あ、そう。そんなに恨みがある?