樋口恵子×上野千鶴子「最期の迎え方」と「墓問題」 謝らなきゃいけないこと、いっぱいやってきた

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樋口:会ってくれるか手紙で聞いて、会いたくないと言われれば、手紙でお礼を書こうかと思ってます。彼女は私の同志なので、「あなたのおかげで私は世の中に出られました。そのことに心から感謝しています」と伝えたいんですよ。

上野:これまでに言ったことないんですか?

樋口:言いませんよ、そんなこと。

上野:なんでなんで? わたしは相手が元気なうちに言っておこうと思って、最近いろんな人にいっぱい感謝を伝えていますよ。あなたにあのときこんなことをしてもらったのがとってもうれしかったとか、あなたのこんなところが大好きとか。今おっしゃったようなことを考えておられるなら、絶対に思い残しのないよう早めに伝えたほうがいいと思います。

樋口:そうですね。筆忠実は明らかに美徳です。

上野:手紙を書いたあとでまた会えたなら、何回お礼を言ったって、いいじゃないですか。1回ぽっきりとか、ケチなことを言わないで。ぜひ、そうしてください。

樋口:じゃあ、まずは手紙を書くか。

ファンクラブの会費は「税金」

上野:少し話題を変えます。いろんなサークルやファンクラブ、活動団体の会員更新時期って、だいたい4月でしょう? それが何十ともなると、結構な金額が積み重なって、毎年まとまった額が出ていきます。実際には会費会員だけで、ほとんど活動らしい活動はしていないものもあるんですけど、税金だと思って会費を払っています。

樋口:私もそういう会に、ずいぶん入っていますよ。

上野:市民として支払う税金と思って、自分が使ってほしい人たちに出しているお金だから自分に負担能力がある間は払い続けます。なかには遠方だったりして、その団体の活動に参加できないような会もあるので、「やめさせていただけませんか」と言ったこともあるんですけど、「会員名簿に上野さんの名前があるだけで励みになるんです」とか言われるとやめられません(笑)。

『最期はひとり 80歳からの人生のやめどき』(マガジンハウス)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

樋口:やめられないわよね。うちにも長いこと仕事をしてきたというだけで、いろんな郵便物がくるんです。その数たるや、ちょっとしたオフィスよりも多いんじゃないかしら。

パートナーが死んだあと、彼もいろんな学会やサークルに入っていたから、それらの団体から定期刊行物が来るたびに、はがきを何通も書いたものですよ。《本人は亡くなりました。長い間、お送りくださってありがとうございました》って。

上野:印刷しなかったんですか? パソコンを使って印刷すれば楽なのに。

樋口:それよりも手で書くほうが楽なの。でも、この先、もう少し、自分の死に支度がスピードアップしたら、定期刊行物を送ってくれている先のリストをつくって、娘か姪に文書にしてもらおうと思います。《長きにわたって御社の資料をお送りくださいまして、誠にありがとうございました。大変役に立ちました。でも私つい最近、亡くなりましたので》って。

上野:亡くなりましたって過去形で(笑)。死ぬ前じゃなくて、死んでから自分の名前で出すんですね。それはいい。

樋口 恵子 東京家政大学名誉教授/NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長

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ひぐち けいこ / Keiko Higuchi

一九三二年東京生まれ。東京大学文学部卒業。時事通信社、学研、 キヤノン株式会社を経て評論活動に入る。著書に『老~い、 どん! あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる』『老いの福袋 あっぱれ!ころばぬ先の知恵88』などがある。

 

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上野 千鶴子 社会学博士。東京大学名誉教授

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うえの ちづこ / Chizuko Ueno

一九四八年富山県生まれ。京都大学大学院修了。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学・ジェンダー研究のパイオニアとして教育と研究に従事。著書に『家父長制と資本制』 『おひとりさまの老後』『在宅ひとり死のすすめ』などがある。

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