無宗教の日本人が「スピリチュアル」にはまる謎 2000年以降の江原啓之ブームは何だったのか

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――現在は統一教会問題を機に宗教への批判が高まっています。オウム事件後のように、数年したらスピリチュアル・ブームが再燃するのでしょうか。

つねにニーズはあると思います。2000年代にテレビで心霊やスピリチュアルが急に復活したのも、やはりニーズがあったからです。今はテレビからYouTubeなどへ媒体がシフトし、江原氏ほどでなくても、捉えにくい形で特定のYouTuberの人気が出ていく可能性があります。

客は消費者であり生産者でもある

ほりえ・のりちか /1969年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。死生学・応用倫理センター(センター長)。死生学、スピリチュアリティ研究が専門。著書に『スピリチュアリティのゆくえ』『ポップ・スピリチュアリティ メディア化された宗教性』『死者の力 津波被災地「霊的体験」の死生学』(共著)など多数(写真:本人提供)。

――2005年にスタートした「癒しフェア」というイベントでは、占いから美容商品まで、癒し関連のセミナーや商品の販売者が出展しています。2023年4月に大阪で開催された癒しフェアでは、2日間で7626人(オンライン参加含む)が来場し、大盛況でした

「癒し」の人気が出たのはスピリチュアル・ブームより前の1997年頃からです。トラウマ(心の傷)という言葉が認知され、傷の癒しが注目されるようになりました。

それ以前は、癒しは自発的な治癒力の活性化を意味していました。ところが、その意味を離れて、リラックス効果をうたった商品のキャッチフレーズとして使われるようになりました。

商品販売を主とする出展者が多い癒しフェアなどのイベントも、このような時代の流れと一致しています。癒しフェアでは、出展するセミナー会社や癒し関連商品の販売者自身も、空き時間にはほかの販売店を回るなど客のように行動しています。

逆に今回は出展者ではない客が、普段は占いやヒーリングなどを実践している場合もあります。癒し関連の民間資格が得られるセミナーを受けると、「消費者であり生産者でもある」という状態にすぐになれるのです。

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