民間初の宇宙ごみ除去装置生み出した発想の転換 タブーに挑み切り開く!アストロスケール・伊藤美樹
こうした状況下、宇宙開発とのバランスをとりながら宇宙環境を改善していくことが、私たちアストロスケールのミッションです。
前代未聞の人工衛星を実現に近づけた「発想の転換」
──前例のないサービスを作るうえで、技術的にはどのような壁がありましたか。
最も困難だった壁の1つは、スペースデブリを捕まえるための人工衛星の開発です。
従来の人工衛星は、地上の一点を見つめながら地球の周りを移動していました。一方で私たちが作ろうとしているのは、スペースデブリの周辺をぐるぐると周りながら状況を診断し、適切なタイミングで捕まえて大気圏に引きずり下ろして、そのときに生じる熱で燃やし尽くすというアクティブな動きをする人工衛星です。
ニュースなどで、国際宇宙ステーションと宇宙船がドッキングする映像を見たことがあるでしょうか。あれはそれぞれの乗り物の中にいる宇宙飛行士が連絡を取り合いながら、お互いの位置を調整することによって結合させています。
しかしスペースデブリの場合は相手がごみなので、意思疎通ができない。その分、衝突のリスクが高まります。
今までに誰も実現したことがない技術だからこそ、そのハードルは想像以上に高いものでした。
──宇宙空間でゴミを捕獲するには、かなり難しい技術が必要なのですね。その状況をどのように打開したのでしょうか?
発想を転換し、いきなりゴールを目指すのではなくステップバイステップでこの事業を進めていくことにしました。
具体的には、すでに存在しているゴミを除去するサービス(アクティブ デブリ リムーバル)を実現する前に、これから打ち上がる人工衛星がゴミになるのを防ぐサービス(エンド オブ ライフ)を開発することにしたのです。