10年で1人前の「寿司職人」3年で握らせる店の狙い 早く握りたい若手も多く、離職率も課題にある
同店は期待を上回るサービスとネタの上質さで、銀座の中でも一目置かれる存在となった。「鮨 銀座おのでら」のニューヨーク店は「ミシュランガイドNYC」に5年連続で、ロサンゼルス店は「ミシュランガイドCA」に3年連続で、星つきレストランとして掲載されている。
このほかにもONODERAフードサービスは多くのファインダイニング(高級レストラン)を擁しているが、なぜカジュアルな「鮨 銀座おのでら 登龍門」を開業するに至ったのか。「鮨 銀座おのでら」統括総料理長を務める坂上暁史氏は振り返る。
「私がONODERA GROUPに入ったときから、海外も含めて鮨店を展開していくことが決まっていました。人材の確保が急務でしたが、中途で寿司職人を採用したとしても、銀座おのでらの想いをしっかりお伝えするのは難しいです。そのため、銀座おのでらの精神が受け継がれた人材をゼロから育成していかなければと考え、育成に特化した『鮨 銀座おのでら 登龍門』を開業しました」
今の若手は早く握りたいという思いが強く、離職率が高くなっているのが課題だ。3年で握らせてもらえるとなれば、モチベーションは格段に上がり、人材の流出も防げる。
かつては労働時間が長かった
労働時間の問題もある。少し前であれば、週に1日休みがあるかどうか。1日の労働時間も長かった。勤務時間が長い分、客がいる営業時間以外に、ベテランの寿司職人からさまざまなことを学べる機会もあった。しかし今では、長く働くことも問題視され、労働時間は半分程度となり、勤務時間内に学びのチャンスを得るのは難しい。
「少ない時間で成長するには、やはり場数をこなすことが大切です。そのため、立ち食いスタイルにして回転率を高めて、握る機会を増やすようにしました。地下にはセントラルキッチンがあります。本物の素材を扱えて、仕込みも学べます」(坂上氏)
提供するネタは、「鮨 銀座おのでら」とまったく同じだ。一流寿司店がこぞって求めるマグロ専門仲卸「やま幸」の鮪も使用している。これだけのネタでありながら、若手の寿司職人が握り、立ち食いになっているからこそ、客単価は「鮨 銀座おのでら」の3分の1から4分の1に抑えられるのだ。
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