「経産省案はエネルギー政策の長期展望欠く」

どうする電源構成<5> 名古屋大・高村教授

――再エネについては、どこまで伸ばせると考えていますか。

2030年に電源構成比30%というのは、決して不可能な数字ではないと思っている。地熱、バイオマス、水力については、事務局もかなり積み上げた数字だと思う。ただ、本来無限のポテンシャルがあると事務局も認める太陽光と風力については野心度が低いと思う。

たかむら・ゆかり●京都大学法学部卒。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。1998年、静岡大学人文学部法学科助教授。2006年、龍谷大学法学部教授。2011年より現職。専門は国際法、環境法(写真:梅谷秀司)

太陽光については構成比7%としたが、2015年1月までのFIT(固定価格買い取り制度)の設備認定分だけでこれを超えている。事務局は(近年急増した)認定分の4割は稼働せずに脱落するというが、それによって賦課金の増加が大きく抑えられれば、太陽光を伸ばす余地も増えるのではないか。太陽光の設備の価格は年々下がっており、おそらく2020年ぐらいをメドに太陽光はFITを卒業するだろう。

市場価格ベースで太陽光が導入されれば、追加の賦課金問題はなくなる。その時の電気料金が高ければ、自家消費や別のビジネスに活用されていく。そのため、再エネの価値が評価され、需要家が選択できる市場環境さえ整備されれば、太陽光の構成比10%は十分達成可能だと見ている。

一方、風力については、エネルギー基本計画でも相対的に安価な電源とされていたが、経産省案の電源構成比1.7%というのは既設分と環境アセスメント(影響評価)中のものを合わせたぐらいの量にとどまる。日本風力発電協会では2030年に全発電量の8.5%を導入できるとしているが、少なくとも5%程度までは伸ばせるのではないか。そうすれば再エネ全体で30%に手が届く水準になるだろう。

――3~4年かかる風力の環境アセスメントを短縮化すべきとの議論があります。

手続きを効率化して短縮すること自体には反対ではない。ただ、住民同意などの手続きを簡略化することは、風力の受容性を落とすことになり、それはやるべきではない。アセスメントのコストは、行政側が工夫することで、業者の負担を減らせるのではと思う。たとえば、ドイツなどのようにゾーニングによって立地に適した地域を明示すれば、業者は立地場所選定の手間が省け、自治体側も業者とのトラブルを避けることができる。

太陽光は2020年頃にFITを卒業へ

――再エネはコストが高い、というのが消極論の根拠とされています。

 再エネのコストはあくまで過渡的なものだ。FITを卒業して市場価格ベースで導入されるようになれば、賦課金は減っていく。太陽光が2020年ごろに卒業し、その後、2030年を過ぎると再エネ全体の賦課金もピークを打ち、いずれゼロに向かう。賦課金が上昇している足元だけで高いと考えるのはいかがなものか。

 再エネのコストは、輸入する化石燃料のコストと違って、外国に資金が流出するわけではなく、国内の事業者に資金が回る。しかも、将来、安い電気を市場に提供してくれる国産のエネルギーインフラをつくる投資であり、同じコストでもまったく価値が違う。子や孫の世代のための“貯金”ともいえるだろう。

――エネルギーミックスの議論が直結する温室効果ガスの削減目標について、2013年基準で26%減という政府案が出されました。

エネルギーミックスの論点は、温暖化問題の論点にも共通する。本当に国民が選択できるような形で議論してきたか、原発が想定通り動かなかったときにどうするのか、といった同じ問題点がある。私としては、再エネをもっと増やすべきだし、熱など電気以外の省エネやコージェネにもまだ余地があると思う。2030年までに2013年比26%削減という目標は、2050年までに80%削減する長期目標との関係からすると、まだ足りない。30%削減ぐらいは十分行けると考えている。

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