さらに、みえこは続けた。
「姉は、都心のタワーマンションに住んでいます。専業主婦です。私も姉のような結婚がしたいんです」
そこで、筆者はみえこに言った。
「でも、そうした男性を探すことができずに、ここまで来てしまったんですよね。理想ばかりを掲げていたら、お相手が見つからないままに、ますます年を重ねてしまいますよ。現実問題、年を重ねれば重ねるほど、結婚は難しくなっていきます」
これまで筆者は仲人として多くの婚活者を見てきたが、結婚できずにずっと婚活市場を彷徨い続けているのは、相手に多くの条件や金銭的負担を求めている人たちだ。
「お見合いするなら、年収600万円以上」「デート代は、男性が払って当然」「結婚したら、生活は男性の収入で賄って、自分が稼いだお金は自分で好きに使う」「家事や育児は、分担してほしい」などなど。
みえこは、言った。
「私は、専業主婦希望なので、家事を分担してほしいなんて思っていません。その分、男性にはしっかりと稼いできてほしいんです」
姉の結婚を憧憬しているようだが、夫に養ってもらっている姉にも、親や妹には言えない苦労があるはずだ。ワンオペレーションの家事、子育ては思いのほか大変だし、ストレスも溜まる。
また一般的に、夫が一家の経済のすべてを担っていると、 “家族は自分のお金で生活できているのだから、自分の言うことを聞いて当然”という思考回路になりがちだ。そこに家族のヒエラルキーが生まれる傾向にある。
……と、こんな話をしたのだが、「今は、まだ理想を曲げることはできません」という言葉を残し、みえこは入会をせずに帰っていった。
200万円の婚約指輪が欲しい
半年ほど前、まさのぶ(35歳、仮名)が入会面談にやってきた。まさのぶは、ほかの相談所で成婚退会をしたのだが、結婚の話を進めていくうちに、女性側から婚約破棄をされていた。
その理由がこうだった。
「婚約指輪を買うためジュエリーショップを回っていたときに、『私、これがいい』と言われのが、200万円の指輪だったんです。その場では『そんな高額なものは買えない』とは言えなかったので、『ちょっと考えさせてほしい』と言って、その日は帰りました」
結婚するとなると、結婚式をしたり、家を借りたり、家具や家電を揃えたりと、何かと物入りになる。年収も平均的、貯金もたいしてあるわけではないまさのぶにとって、婚約指輪に200万円を払うことはできないと思った。
次に会ったとき、女性にそれを伝えた。
「いろいろ考えたけど、やっぱり今の自分には婚約指輪に200万円は出せないかな」
すると、彼女が言った。
「結婚のお祝いということで、親に出してもらうことはできないの?」
“あなたがダメなら、親が出して当然”という口ぶりに驚いたものの、せっかく決まった結婚をダメにしたくはなかったので、それを親に伝えた。すると、父親が言った。
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