彼はよく「アジャスト」という言葉を使います。「適応する」ということです。
アメリカ人ながら、日本語を磨き、日本文化に適応してきた彼だからこそ、「適応力」の重要性をよくわかっているのでしょう。
ペンシルベニア州立大学のバスケ部では、伝説の名コーチ、ブルース・パークヒル氏に鍛え上げられましたが、「(軍曹型の)手法に影響を受けながらも、自分はもう少し共感型」と形容するように、時代に合わせてそのスタイルをアジャストしてきました。
「謙虚な学び」をひたすら続ける
そのために、ひたむきに続けてきたのが「謙虚な学び」。昔、自分が教えられたやり方を良しとせず、知識をアップデートする努力を続けてきました。
休みには、自ら車を運転して、全米中のNBAやカレッジのバスケットボールチームの練習やゲームの現場を見て回り、常に、よりよい指導法を摸索したそうです。
そうして編み出したフォーメーションは100以上。それを徹底的に教え込みました。
深い学びと洞察に基づく指導と、自分が教えられたやり方を踏襲するだけの指導。違いは明らかですよね。
コートの上では怒っても、必ず、その後には、フォローを入れることを心がけているそうです。
声を上げた理由を、丁寧にエビデンスをもって説明する。そのために、選手一人ひとりのボディランゲージや表情をつぶさに観察し、心情を読み取る努力を欠かしません。
そうした相互理解に大切だと力説するのが「ダイレクトなコミュニケーション」。
「通訳を介すと、エモーション(感情)が伝わらない」からと、少々つたなくても日本語を貫いてきました。
「一方通行ではなく、納得するまで双方向でおこない、間違いがないかをチェックすべき」(前掲書)と説いています。
「トップダウンで命令する」がデフォルトである日本の組織のスタイルとははっきりと一線を画しているのです。
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