強冷水の刺激がもたらす健康効果についてはさまざまな説やデータがあるが、フィンランドで最もよく取り上げられるのが、筋肉疲労の緩和作用だ。
冷水にさらされた皮膚下では、冷えた器官に血液をたくさん送り込むため、いっきに血流が上がる。
血液循環が良好になると、筋肉や組織に溜まった老廃物の排出スピードが上がり、細胞がより多くの酸素を獲得できるため、筋肉疲労からの回復スピードが高まるのだ。
このメソッドは、近年とりわけアスリートたちの間で「コールドセラピー」として普及しており、自宅やジムへの設置用に、水道水を4度まで冷却できる装置を搭載した単身用浴槽を開発した企業もある。
この「フィンランド版水風呂」は、東京五輪の選手村にも持ち込まれ、フィンランド人選手団のためにフル稼働していたそうだ。
冷刺激は「自己肯定感」も高める?
また、フィンランド・オウル大学の温度生物学者の研究によれば、冬季の約3カ月間週4〜7回アイスホールスイミングを行った被験者の風邪の疾患率は、対照群の疾患率に比べて20%も低下していた。
この根拠として、定期的かつ継続的な冷刺激が体組成の免疫システムを強化し、抵抗力を高める可能性が指摘されている。ともあれ、冷水浴には風邪を引きにくくする効果も見込めるというわけだ。
さらに冷水浴のユニークな副次効果として、「冷水の恐怖の克服」という体験が、私たちの「レジリエンス」を高め、自信や自己肯定感を上げてくれる点を挙げる研究者もいる。
レジリエンスとは、ストレスなどの外的圧力から回復し、外的環境に順応する精神力のことだ。
確かに、初めて冷水浴を行うときは、誰でも不安や恐怖を感じる。
だがその際に、パニックにならず心を落ち着かせてそれに挑み、徐々に成功体験を重ねることで、ストレスに打ち勝ち、過酷な外的環境にも冷静に対処できる自信も養えるのだ。
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