世界的に冬の時代の「M&A」。なぜ日本だけ元気? 新規プレイヤーたちの「思惑」と「今後の懸念」

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戦略コンサルタントとしてビジネスという側面から、日々M&Aに携わっている筆者の実感としても、中型案件だけでなく、大型案件に対しても各PEファンドとも投資意欲は旺盛で、ビジネスデューデリジェンス(BDD)開始に至るものだけでなく、潜在的な売り手候補に対する積極的な買収提案活動も継続的に行われており、我々の多く肌感覚とも一致している。

このように相対的に好調な日本のM&A市場に裏打ちされて、日本の銀行各社はグローバルのブティック系投資銀行を相次いで買収した。具体的には、みずほ銀行がグリーンヒルを買収し、三井住友フィナンシャルグループは、もともと資本提携していたジェフリーズの持ち分を最大15%まで引き上げた。

M&A主体の多様化とそのリスク

グローバルと比較して好調なM&A市場に対して、海外の投資家・PEファンドは熱い視線を送っている。これまで、国内でのM&Aにおいて外資系と言えば、ベインキャピタルやカーライルなどの米系PEファンドの存在感が大きかった。

しかし、ここ数年で欧州系のPEファンドや中東やシンガポールなどの政府系ファンド(ソブリンファンド)が積極的に日本国内の投資機会を模索している。たとえば、スウェーデンに本拠地を置くEQTは、アジア系の投資ファンドであるベアリング(BPEA)を買収し、日本の拠点を強化したり、スイスに本拠地を置くパートナーズグループも日本の拠点を強化したりしている。

また、ソブリンファンドも日本への投資を強化しており、シンガポール投資庁がベインキャピタルの投資先であるワークスヒューマンインテリジェンスを買収したり、アブダビの政府系ファンドであるムバダラが、そごう・西武の買収を企図しているフォートレスを買収したりしている。実際に、我々のもとにも中東の政府系ファンドから日本市場に対する見立てを求められたり、日本市場に参入する場合の仕方に関してアドバイスを求められたりしている。

そのような外資系ファンドだけではなく、日本の銀行系プレイヤーもM&A市場で主体となろうとする動きがある。例えば大手銀行は、企業再生系ファンドを相次いで組成している。三菱UFJ銀行は、全額出資の子会社として、再生ファンドとして「MUFG ストラテジックインベストメント」を立ち上げ、最大500億円の1号ファンドを組成する。三井住友銀行は、2020年にSMBCキャピタルパートナーズを立ち上げ、すでに会社更生手続を申請したイセ食品に投資をしている。

また、投資ファンド設立の動きは、都市銀行だけではなく、地方銀行においても同様の動きがある。例えば、八十二銀行は、300億円規模の投資ファンドを立ち上げた。それ以外にも、やまがた銀行や百五銀行、ふくおかフィナンシャルグループなども投資ファンドを立ち上げている。

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