世界的に冬の時代の「M&A」。なぜ日本だけ元気? 新規プレイヤーたちの「思惑」と「今後の懸念」

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握手をする男性会社員
世界的に冷え込んでいるM&A市場だが、例外的に日本では活況を呈している。どんなプレイヤー達が、どんな思惑でM&Aに参加しているのか(写真:Graphs/PIXTA)
大手IT企業のリストラなど、海外での人員削減の報道をよく聞く今日。それに伴いM&A市場も世界的に冷え込んでいるが、例外的に日本では活況を呈している。どんなプレイヤーたちが、どんな思惑でM&Aに参加しているのか。今後注意すべき点は何か。『最強のM&A』(東洋経済新報社)の編著者であるA.T. カーニーの久野雅志氏がポイントを解説する。

2022年は、世界的な景気後退懸念や中央銀行による利上げに伴って、企業の買収余力が低下しM&A市場は低調に終わった。特に、欧米では前年比金額ベースで30~40%減少した。

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そのような低調なM&A市場の動向を踏まえ、欧米系の投資銀行は、収益確保と稼働率調整のため、昨年末から今年にかけて、軒並みリストラを断行している。

具体的には、報道ベースでは、ゴールドマン・サックスが、昨年秋の数百人規模のリストラに加えて、今年の1月には全社員の6%にあたる3200人規模のリストラを発表している。また、モルガン・スタンレーなどの競合他社も、全社員の2%程度の社員の削減を発表している。

近年急激に人員を増やしすぎた反動ともいわれているが、いずれにせよ今後一定期間はM&A市場が回復しないと見ている証左である。

減速する海外市場、堅調な国内市場

2023年に入っても、1~3月期では、世界全体では、金額ベースで昨年対比40%減、アメリカは同80%減、欧州は同60%減と失速傾向は変わっていない。

一方で、日本に目を向けてみると、同様に縮小懸念があったが、1~3月期には、M&A件数は約20%減少した一方で、日本産業パートナーズ(JIP)による東芝の買収(2.0兆円※)や、オリックスによるDHCの買収(3000億円※)などの大型案件に牽引され、金額ベースで見ると15%増加した。4~6月期に入っても、産業革新投資機構(JIC)によるJSRの買収(9000億円)やアステラス製薬によるアメリカ・アイベリック・バイオの買収(8006億円)など大型案件も発表されるなど、比較的堅調に推移し、1~6月期の累計で、件数ベースでは10%減少したものの金額ベースでは20%増加した。

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