アストン「DB12」あえて新ジャンルと称する根拠 グランドじゃ物足りない高級クーペの超進化

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「フェラーリ『ローマ』のように非常にシャープな応答性は必要ないと私たちは考えたし、一方でベントレー『コンチネンタルR』のように鷹揚すぎるのも違う。競合と目されるクルマとの立ち位置の違いを、ステアリングフィールで実現したのです」

800Nmもの最大トルクが2750rpmから発生するだけあって、加速の反応はするどい。でも、するどすぎることはなく、ちょっと踏むと、意図どおりにちょっと速度を上げる。右足の力をちょっとゆるめると、ちょっと減速する。ドライブしている私の右足とクルマとがつながっている痛快さだ。

エンジンスターターボタンやシフトセレクターはセンターコンソールに集約(写真:Aston Martin Lagonda)

南仏の試乗コースは屈曲が多いうえ、道幅も狭く、ハンドル操作に集中する必要があるが、ふととても静粛性が高いことに気づく。アストンマーティンによると、このクルマのためにミシュランに開発してもらったタイヤ、「パイロットスポーツ5S」の恩恵によるところが大きいそうだ。

「タイヤノイズを抑えて」は、アストンマーティン開発チームのオーダーで、それに対してミシュランはポリウレタンなどを使い、インシュレーションの技術をフル活用して対応した。結果「(DB11より)20%、静粛性を引き上げることに成功した」という。これも「なるほど」と思わされた。

そういうわけもあり室内は静かで、さらにドライブモードを「GT」あるいは「スポーツ」にすると、リラックスして乗っていられる。

360km/hまで表示があるメーターパネル(写真:Aston Martin Lagonda)

フランスのオートルートでは、快適そのもの。もちろん、少し右足に力を込めれば交通の流れをリードできるが、そうしなくてもよい。ここがDB12のもう1つの魅力的な部分といえる。

英国調というのか、クロスステッチが入れられ、どことなくクラシックな雰囲気のシートやルーフライニングに包まれ身を置いていると、「ゆっくりでもいいよね」という気になってくるのだ。

インテリアはあくまでもラグジュアリー(写真:Aston Martin Lagonda)

ラグジュアリークーペの超新星

エクステリアは、「75年にわたるDBシリーズのヘリテイジを生かしつつ、スーパーツアラーと称するのにふさわしいプロポーション」と、デザインディレクターのマイルス・ニュルンバーガー氏は説明してくれた。

日本での価格は2990万円で、デリバリー開始は2023年末ごろを予定しているとは日本法人の弁。フェラーリ ローマともベントレー コンチネンタルRとも異なる魅力を備えたDB12、日本でも新たな高級スポーツツアラーの選択肢として、人気を集めるのではないか。

<Aston Martin DB12>
全長×全幅×全高:4725x2060x1295mm
ホイールベース:2805mm
車重:1685kg
エンジン:3982cc V型8気筒ツインターボ
駆動方式:後輪駆動
最高出力:500kW/6000rpm
最大トルク:800Nm/2750~6000rpm
変速機:8段AT
0-100km/h加速:3.6秒
価格:2990万円
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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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