最初数万円だった借金がどのようにして450万円にまでふくらんだのか。どういうところから借りたのか。どのように取り立てられたのか。なぜ借金をやめられなかったのか。誰が助けてくれたのか。どうやって解決したのか。その時々の自分の考え方や気持ちをまじえながら、詳細に語りました。竹山さんの失敗談は、すべてが具体的で、まるで再現VTRを見ているような感覚になりました。
竹山さんに限らず、「しくじり先生」たちはみな、成功したときに、おごったり、天狗になったりして失敗した、と話します。有名人でなくとも、周りからちやほやされて調子にのることは誰にでもあります。
先生たちの詳細な体験談を聞くと、自分にも起こりうるようなことであるように思えてくる。「そういえば、自分もこの間、こんな風に奢った態度をとってしまったな」「この間、こんな失言をしてしまった」と反省するきっかけにもなります。
もしこれが美談にまとまっていたら、ここまで視聴者の心に響かなかったのではないかと思います。
かつては、会社の上司が飲み屋で部下に自分の失敗談を語ったといいますが、今はそうしたコミュニケーション自体が減っています。そういう意味では、若い視聴者にとっては、この番組のコンセプト自体が新鮮だったのかもしれません。
この番組を見ていていつも感心するのが、「よくここまで語れるな」ということ。たとえば、NHKの「課外授業 ようこそ先輩」でも著名人の先生が子どもたちに向けて自らの失敗体験を語ることはありますが、ここまで“えぐい”内容は話しません。
「しくじり先生」では、授業の要所要所で教材として過去のVTRを使います。堀江貴文さんの授業(2015年4月20日放送)では、逮捕されたときの映像から、拘置所を出てくる映像までのシーンが立て続けに放送されました。同じく前園真聖さんの授業(同)でも、2013年10月、酒に酔ってタクシー運転手を殴って逮捕されたときの謝罪会見のVTRが流れました。
先生たちは、自分の失敗を他人に語るだけでもつらいのに、最も大きな失敗を犯したときの映像と向き合わなければならないのです。
前園さんは番組終了間際に「僕自身も、今日、この場でこの話をもらって、お話をさせていただくって聞いたときに、最初はちょっとやっぱり『もう1回、自分のああいう映像であったりとかを見直すのはちょっとつらいな』っていうこともあった」とおっしゃっていましたが、この番組に出演する先生は、相当な覚悟が必要だと思います。
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