今後、日銀の7月末の展望レポートで示される2023年度のCPIコア(生鮮食品を除いた消費者物価指数)の見通しは、2%台半ば前後に上方修正されるだろう。これは、4月以降のインフレ率の上振れでほぼ説明ができそうだ。
ポイントは来年2024年度のCPIコアの想定だ。現時点の予想は2%である。もし、これが「2%台前半に上方修正され、かつ下振れリスクが低い」と判断されれば、日銀は「基調的な2%インフレの実現可能性が高まった」と判断することになる。そうなれば、この7月末にYCC修正などの政策変更が行われうる。
日銀の政策変更の条件達成へのハードルは高い
このシナリオの可能性は、50%程度はありそうで、筆者にとって悩ましいのだが、現時点でメインシナリオにするほどの自信はない。というのも、2年連続で日本企業が明確に賃上げするためには、日本の経済が1%以上の経済成長が続き、需給ギャップ改善が続く必要がある。仮に経済成長が失速すれば、企業による賃上げも今年だけにとどまる。
日本経済の最大の下振れリスクは、米欧や中国など海外経済環境の悪化だろう。2000年以降、海外経済の失速をきっかけに、日本銀行による引き締め政策が頓挫、そのたびにデフレに逆戻りする経験を繰り返してきた。
もし、植田総裁が「今回の脱デフレ完遂の機会を逃さない」と考えるなら、2024年の海外経済リスクがもう少し見えてから政策修正を始めるのではないか。そうであれば、YCC修正を含めた政策判断は、7月27~28日の次の日銀金融政策決定会合ではなく、秋口あるいは年末までずれ込む可能性が若干高いように思われる。
ところで、昨年もそうだったが、円安が進むとメディアで物価高と結びつけられて批判的に取り上げられ、最近もそうした記事が散見され始めた。「経済の長期停滞や競争力低下が続いているから、円安が起きている」などの論調もあるが、総じて的外れな見解だろう。2022年以降の適度な円安は、日本経済の経済正常化を促す追い風と筆者は位置付けている。
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