まずはこの1カ月ほどの市場の動きを振り返ってみたい。
筆者は、5月14日のコラム「FRBは市場の期待どおりに利下げを実施するのか」の中で、アメリカの10年国債金利が3.4%付近で推移するなど、債券市場では利下げ開始が織り込まれつつあることを指摘した。
一方で、こうした早期利下げを見込む金融市場の見方については、疑問視した。FRB(連邦準備制度理事会)は「早々に利下げには転じない」姿勢を明らかにしており、当時の市場との認識ギャップが大きかったからだ。
そのため、アメリカの長期金利はいったん上昇する余地があり、為替市場では再びドル高円安が進む可能性を指摘した。
アメリカ利下げ期待後退、パウエル議長もタカ派に追随
その後、5月中旬から6月月初にかけて、アメリカの長期金利は大きく上昇して3.8%台まで上昇した。クリストファー・ウォラー理事などのFOMC(公開市場委員会)メンバーが、6月会合では利上げしないとしても、7月会合に利上げを再開させる考えを示したためである。
これらの発言で、早期利下げ期待はほぼ完全に払拭され、為替市場ではドル円相場は1ドル=135円付近から140円付近までドル高円安が進んだ。
その後、6月13~14日のFOMCでは、大方の予想どおりに政策金利は5.00~5.25%で据え置かれた。ただ、同時に判明したFOMCメンバーの2023年末の想定政策金利は、3月対比で明確に上方修正され、ジェローム・パウエル議長などを含めた多数が2回程度の追加利上げを想定していた。
政策金利据え置きとともに、FRBが「タカ派姿勢」を打ち出すことはある程度想定されていたとはいえ、複数回の追加利上げを考えるタカ派メンバーの意見に、パウエル議長ら多くが同調したのは、筆者にとってはサプライズだった。6月23日現在ではドル円相場は1ドル=143円台まで一段とドル高が進んでいる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら