一方、パウエル議長は会見において、「7月以降の会合はライブである」と述べたことなどで、議長は追加利上げへの強い意向をもっていないと解釈された模様である。
このため、「FRBのタカ派化」が判明したものの、債券市場の利上げ期待は従前からほとんど変わっていない。多数派メンバーの追加利上げの想定は「タカ派のポーズを示しただけ」だと認識されていると見られる。
パウエル議長自身も「データ次第」で判断するのだろうし、筆者自身も、実際に5.75%まで利上げが行われる可能性は高くないとみている。
ただ「インフレが想定よりも高止まりしている」と多くのメンバーが判断していることは、軽視できないだろう。FOMC後の21日の議会証言でも、パウエル議長は今後2回程度の利上げを考えている点に改めて言及した。
次回の7月FOMC(25~26日)まではあと1カ月程度しか時間がない中で、1カ月分の雇用・インフレ指標が双方ともに大きく下振れなければ、7月会合では再利上げが行われる可能性が高い。
引き締め効果は今後顕在化、企業業績改善期待も疑問符
こうした中で、金利見通しに関するFRBと金融市場の認識ギャップは、先述した5月中旬同様に、再び広がっているようにみえる。金融市場とFRBの認識ギャップが縮小する中で、アメリカの長期金利は再び4%前後まで上昇する余地がありそうである。
一方、アメリカの株式市場においては、長期金利が高止まりする中でも、5月末からは大型ハイテク株が牽引しながら現在まで株高が続いている。FRBのタカ派化が判明したFOMCの後に長期金利が安定したことが、株高を促した。
利上げの到達点が見えてきた中で、「2024年にかけて経済や企業業績が底入れする」、との見方が株式市場では強まっているとみられる。これまで経済減速が軽微だったので、5月後半からは企業アナリストによる企業業績見通しが従来よりも改善に転じる動きがみられる。
だが、タカ派姿勢が強いFRBの利上げの景気引き締め効果は、今後顕在化するため、経済が早期に底入れしない可能性がある。また、確かに財品目(モノ)の高インフレはすでに和らいでおり、これは利上げを抑制する意味では株式市場の好材料ではあるものの、インフレの落ち着きは、企業の利益率を押し下げる方向に働きうる。
このように、引き締め効果による成長抑制と、高インフレが和らぐことによる企業利益率の低下が、今後アメリカ企業の業績を押し下げかねない。6月分の米欧製造業の企業景況感指数は、緩やかながらも総じて悪化が続いている。筆者は「株式市場が想定している業績改善見通しは期待外れに終わるリスクがある」、とやや慎重に考えている。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
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