積水ハウス、客の「感性」刺激で住宅を売る新機軸 住宅販売の最前線で巻き起こる意外な新潮流

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積水ハウスなどの大手住宅メーカーが、感性に訴求する販売手法を打ち出す背景には、住宅市場の厳しい見通しがある。野村総合研究所によると、新築住宅着工戸数は2022年度の86万戸から漸減していき、2040年には55万戸にまで減少する見通しだ。

前出の東京カンテイによると、足元でも住宅の購入を様子見する消費者が増えているという。「所得が大きく伸びていないところに、物価高もあって生活が楽ではない。そういう状況下では、消費者は住宅ローンを組めない。住宅価格も上がっているので、買うのをためらう傾向にある」(井出上席主任研究員)。首都圏だけでなく、大阪、福岡、札幌といった大都市圏でも、同様の傾向にあるようだ。

「住宅冬の時代」に備えるハウスメーカー

マンションは共用部を豪華にするなどハード面で差別化ができる余地がある。一方、戸建ても4階建てにしたり、太陽光パネルを設置するなどして環境性能を高めることもできるが、高付加価値の住宅を購入できる富裕層は限られる。「『設備付加は不要なので、少しでも価格を安くしてほしい』という消費者が多いので、戸建てはどうしても価格面での勝負になる」(井出上席主任研究員)。

積水ハウスなどの大手メーカーが新しい販促策を打ち出したのは、この先に待ち受ける「住宅冬の時代」に、感性に着目して高価格帯の需要を喚起していこうとの意識の表れであろう。新機軸が顧客に受け入れられるかどうか、大手メーカーの生存をかけた勝負は始まったばかりだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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