大家には「1日で終わらせてほしい」と言われていたが、急遽2日間に分けることになった。普段は和気あいあいと楽しそうに作業をしているスタッフからも、さすがに笑顔が消えていた。
最下層のゴミは新聞紙などの紙類が湿気で分解され、もはや土になっていた。40年もの間、押し固められているので、手でどうにかなる硬さではない。腐敗が進んで畳に穴が開いているところもあった。スタッフの1人がバールで固まったゴミを掘り起こし、それをひたすら袋に詰めていく。
男性は「15年くらい前からモノが溜まり出した」と話していたが、それより前の住み始めた約40年前から部屋はゴミ屋敷になっていたようだ。最下層からは、1987年の新聞や1983年の漫画雑誌が出てきた。松田聖子がCMで「SWEET MEMORIES」を唄った懐かしの缶ビールも発掘された。
「正直、またすぐにゴミ屋敷に戻るパターン」
片付けは2日間、計11時間45分で完了した。男性は畳や壁の張り替えなどの修繕をした後、引き続きこの部屋に住むそうだ。車の中で待っていた男性が部屋に戻ってきたが、反応はすこぶる薄い。
40年ぶりにゴミのない部屋を見たら、普通は喜ぶものだ。その反応を見て、「正直、またすぐにゴミ屋敷に戻るパターンだと思いました」と二見社長が言う。ゴミ屋敷から脱却できる人との違いは何だろうか。
「決定的な違いは、本人が困っているかいないか。片付けた後にゴミ屋敷やモノ屋敷に戻らない人って、やっぱりその部屋にストレスを抱えながら住んでいて、“なんとかしたい”という思いを持って依頼してくれています」
ゴミ屋敷脱却のために重要なのは、誰かに促されての片付けではなく、自発的に行動をしたかどうか。そこまで住人の気持ちを持っていければいいが、根気よく待つ時間が必要であるし、実る保証もない。どうしても脱却できないという場合は、散らかるたびに今回のようにお金をかけて一気に片付けてしまうのもひとつの手だ。
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