山Pが出演の韓流映画『SEE HEAR LOVE』の戦略 「Amazonプライムビデオ→海外劇場公開」の試み

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もちろん、それは間違いではない。だが決して、世界市場でハリウッドと並ぶほどのポジションを獲得できたわけではない。主に配信プラットフォームで『イカゲーム』に代表されるヒット作を連発したおかげで、配信市場で続々作品を出し続けている。個々の作品の製作費も日本のドラマや映画よりずっとかけている。ただし、あくまでNetflixのような配信サービスでポジションを得たということだ。英田氏によると、「そこで活躍できる制作会社やクリエイターは限られており、むしろ格差も生じている」状態だそうだ。

日本との共同製作を希望する理由

さらに韓国国内の映画興行は冬の時代とも言われ、韓国作品のヒットが少なくなってしまった。ハリウッド発の世界的ヒット作品と、最近は『すずめの戸締り』や『THE FIRST SLAM DUNK』といった日本のアニメ作品がヒットしており、韓国映画はあまり見られずヒットもしていない。あくまで配信向けの作品が活況を呈しているだけで、そちらも企画が列を成している状態。「劇場公開用の映画は逆に簡単に作れなくなっています」と英田氏は解説する。

『SEE HEAR LOVE』を映画にしたいと考えたイ・ジェハン監督が、日本との共同製作を希望したのもそんな背景があったようだ。『私の頭の中の消しゴム』は日本でも大ヒットしており、この作品も日本に馴染むのではと考え打診してきたという。相談に応じたTIMEの英田氏は「海外共同製作映画は、どこの国向けに作るのかが不明になりがち。日本の役者に演じてもらい、まず日本市場で見てもらいたい」と考えた。そこで監督がまずオファーしてきたのが山下智久、そして新木優子だった。それ以外にも漫画家のアシスタント役に山本舞香、敵役にあたる若社長が高杉真宙、2人をひたすら見守るタクシー運転手が深水元基、ヒロインを助ける謎の女性が山口紗弥加と美男美女揃い。悲しくも美しいイ・ジェハン・ワールドを彩っている。

韓国語の脚本を日本語化する際は、かなりの時間を要したという。「言葉が随所で大事な物語。それを日本語にするとき、うまく翻訳しないと台無しになりかねなかった」と英田氏は振り返る。目と耳がそれぞれ不自由な2人だからこそ、言葉は物語の重要な鍵になっている。

現場は韓国人と日本人のスタッフが入り乱れた。当初は撮影や照明などのメインスタッフだけが韓国人で、他は日本人でとも考えたが結果的には半々になったという。

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