「不安を感じる人」の心がすっと楽になる考え方 ユング心理学で考える失敗に対する向き合い方
20代後半~30代前半に中年期的な心性に突入している人はいるし、60代~70代に入ってから不安が立ち現れて危機を迎える人もいる。
いずれにしても、ここで私が言いたいのは、時期はそれぞれの人によってまちまちだけれども、人生において不安が顕在化するときはいつか必ず来るのではないか、ということである。
そして多くの場合、人生の節目の時期に不安はその姿を鮮明にする。なぜなら、節目の時期というのは、これまでうまくいっていたことがうまくいかなくなるからこそ訪れるもので、失敗や負けを契機としていることがほとんどだからである。
失敗して負けたことは変化へのチャンス
そもそも心理療法は、人生でつまずき、立ち止まらざるをえなくなったとき――つまり、人が不運や不幸に見舞われ、失敗や負けを経験したときに初めて成立する営みといえる。
多くの心理学やそれに基づいた心理療法は、基本的に、今回は失敗したり負けたりしても、次は成功し勝つことを目指している。
一方、ユング心理学やユング派の心理療法は、成功することや勝つことにあまり興味がない。その人が今、失敗して負け、立ち止まったことに意義を見出す。
ユングは、失敗したり負けたりしたときにこそ立ち止まることができ、そこには変化へのチャンスが生まれると考えていた。
もちろん、成功することや勝つことに意味がないというわけではなく、人生にはさまざまな段階があり、成功したり勝ったりすることが大事になる時期もある。
成功し、勝つこと、もしくはそれを目指すことは、ユングの言うところの人生の前半、すなわち中年にさしかかるまでの間の人生において、社会に適応していくための原動力や推進力になり得る。個人差や置かれた状況にもよるが、特に若いうちは、成功して勝つことが人生の中心的な課題になる場合がある。
しかし、ずっと成功して勝ち続けられるほど人生は甘くなく、やがてほとんどの人に失敗するときや負けるときが訪れる。
挫折や脱落、離婚や別離、病気という形かもしれない。いじめやパワハラ、セクハラなどの人災や、天災などの理不尽な出来事に襲われる形かもしれない。あるいは、成功し勝っていると思っていたものの、その虚しさに気づいたり、実は負けているのではないかと感じる形なのかもしれない。
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