「売り込み」ではなく「発信」で仕事をつくるコツ 「やりたい」から逆算するDX時代のキャリア戦略

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これまで、「弱いきずな」をつくる役割を果たしてきたのがSNSだった。2008年から10年くらいまでのTwitter、2012年から15年くらいまでのフェイスブックは、新しい世界を広げてくれるメディアとして存在感を示していた。

ところが、コロナ禍以降の2年間、弱いきずなは、密を避けるという行動パターンとともに消滅した。人との交流が制限されてしまい、ゆるい人間関係がつながる機会は急減する。コロナ禍の初期にオンライン同窓会を開催して古い人とのつながりが復活したという人もいたかもしれないが、一時的な流行で、すぐに飽きられてしまった。

気がつくと、僕のコミュニケーションの9割以上を家族と職場の人が占めるようになった。自宅、時々職場のような生活ではセレンディピティが起こる可能性は極端に低くなる。そして「知り合い」という弱いきずなが消失した。これがコロナ禍で起きたことである。

同時に、SNSはかつてのような弱いきずなをつくる力を失いつつある。Twitterなどは一方的な発信メディアとなり、それがきっかけで新しい何かが生まれる機会は激減してしまったように見える。

「やりたいことを発信したら必要なものが入ってくる」というモデルはインターネット空間には前からあった。ただ、以前はリアルの空間とインターネット空間は別々に存在していたから、「インターネット空間ではそういうモデルはよく起こるけれど、リアル空間ではなかなか実現しない」という印象が強かった。

しかし、今はリアルの世界においてもSNSが「社会の窓」になっているから、インターネット空間で起こっていることがリアルの空間でそのまま起こるようになっている。

たとえば、ビジョンやミッションの策定を課題としている経営者が増えているように感じていた僕は、実験的にフェイスブックで「経営者向けに壁打ち(話を誰かに聞いてもらって考えを整理すること)をやります」と投稿したところ、30件以上のオファーが届くなど、想像以上の反響があった。アクティブに発信していくことで世の中のニーズを引っ張り出し、価値も生み出せるのだ。

「本当にやりたいこと」を起点に

では、どのようなスタイルで発信すると良いか。それは、ビジョン、つまり「これをやりたい」を起点に継続的な発信を続けることだ。  

『WHYから始めよ!』の著者として知られるサイモン・シネックは、人を動かすような偉大な人物は、「ゴールデンサークル」というシンプルなパターンに基づいて行動しているという。ゴールデンサークルは、Why(なぜそれをするのか)、How(どうやってそれをするのか)、What(何をするのか)によって構成されており、なかでも中央に位置するWhy、「何のためにやるのか」「何を信じているのか」「その組織の存在する理由は何か」といった感情に訴えかける情報に人は心を動かされる。

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