今般の中期答申が手本の一つとしたのは、2000年7月に政府税調が出した中期答申「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択」である。今般の中期答申のメインタイトルは、この答申のメインタイトル「わが国税制の現状と課題」にあやかっている。
2000年の中期答申では、「この答申により、税制の現状と課題についての国民の理解が深まり、国民参加の下に、21世紀を展望した今後の税制改革論議が行われることを期待して」、税制論議への国民の参加と選択のために必要となる判断材料を幅広く提供することに重点が置かれた。
そのため、税制の基本的な考え方を教科書的におさらいするところから始まり、所得税や法人税、消費税など個別税目の現状と課題について記している。
今般の中期答申も、この構成に倣っている。時代は移り変わり、そしてさらに大きく変化しようとしている今日において、「あるべき税制」について国民が議論に主体的に参画する助けとなることを目指して取りまとめられた。
この中期答申をぜひ手に取ってご一読いただければ幸いである。
これまで抜け落ちていた「税収は十分か」
注目点について触れよう。
答申は、第1部の基本的考え方と経済社会の構造変化と、第2部の個別税目の現状と課題という2部構成となっている。
第1部では、税制の基本的考え方を整理している。その中で、今般の答申では、これまでわが国の税制における租税原則を「公平・中立・簡素」と位置づけてきたが、租税の「十分性」もこれらの3原則と並んで重要なものと位置づけるべきと提起している。
租税の「十分性」とは、財政需要を満たすのに十分な租税収入があげられることを意味する。現に、わが国の財政構造は、歳出規模に比べて税収が不十分にしか確保できていない。
少子化によって数が少なくなっていく将来世代一人ひとりの負担の重さに従来以上に配意し、財政の持続可能性を損なわないために必要な負担を分かち合うことが必要である。それとともに、歳出の内容や水準も、租税を負担する国民が納得いくものにする必要がある。
租税の「十分性」は、これまで3原則には含められていなかった。それというのも、歴史的背景があろう。
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