5月17日にこども未来戦略会議が開催され、岸田文雄首相は、6月の骨太の方針までに、必要なこども・子育て政策の強化の内容、予算、財源を盛り込むこども未来戦略方針を取りまとめるよう指示した。いよいよ、子ども予算の議論はヤマ場を迎える。
子ども予算は児童手当だけではないのだが、今年の年頭以来、何かと児童手当に注目が集まりがちである。前述のこども未来戦略会議でも、岸田首相は少子化の課題について、第1に児童手当の拡充を始めとする経済的支援の強化を挙げた。
児童手当における議論の焦点は、所得制限の撤廃、18歳までの支給対象の拡大、多子世帯への給付の増額である。意見が対立しているのは、所得制限の撤廃である。
児童手当の所得制限撤廃に要する1500億円
こども未来戦略会議以外で、同時期に開催されている他の政府の会議でも、児童手当の所得制限について議論されているが、賛否がわかれている。しかし、本稿執筆時点で、所得制限撤廃に異議を唱えるのは経済界と一部の論者だけとなっており、まるで忖度するかのように撤廃賛成論が強まっている。
児童手当で所得制限を撤廃するには、1500億円の追加財源が必要となる。2022年10月以降、年収1200万円以上の世帯への児童手当の支給(特例給付)は廃止されたが、その際浮いた財源を待機児童の解消を図るべく保育の受け皿整備に充当している。所得制限を付けた際の財源はすでに別の子ども政策に使われてしまっており、撤廃に追加財源が必要なのだ。
ただ、賄おうと思えば賄える規模といえる。政権からすれば、所得制限を撤廃したほうが世論の受けが良いとみれば、その意味での「コストパフォーマンス」は高いのだろう。
児童手当以外にも、「こども誰でも通園制度」の創設などのサービスの拡充や、育児休業制度の強化、働き方改革を中心とする共働き・共育ての推進など、目白押しである。
子ども予算の拡充に必要な追加財源は、将来世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で安定的に支えていく必要がある。
子ども予算の財源負担を、子世代に先送ることは本末転倒である。教育や子育ては「投資」なのだから、国債で賄って将来に子どもたちが育った後で回収すればよいという話もある。しかしそれは、2つの意味で問題だ。
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