子ども予算を「ねずみ講」「消費税」以外で賄う解 現役世代の後期高齢者支援金を減らして回す

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その点、消費税ならば、これらのややこしい矛盾は生じない。消費は老若問わず行うから、消費税は世代に偏りなく負担する。消費税は、税なので、リスクに見合った保険料という考え方をする必要はない。

岸田内閣では、子ども予算のために必要な追加財源に消費税を用いることを考えていない。しかし、消費税を封印したことによって、その財源確保で生じた矛盾に苦慮しなければならなくなっている。

ただ、子ども予算の追加財源のために社会保険料を用いるとしても、この矛盾を解消する方法がある。それは、後期高齢者支援金を減らして現役世代の医療保険料を減らす代わりに、75歳以上の医療保険料を引き上げ、減らした分の現役世代の医療保険料を子ども予算の財源負担に回すことである。

保険料本来の「リスクに応じた負担」

子育てにまつわるリスクに直面しない75歳以上の高齢者に、社会保険料の形で負担を求めるとなると、論理矛盾が起きる。しかし、現行制度において、現役世代は、自ら払う医療保険料の中から、自分たちとは無関係の75歳以上の医療費のために財源を負担させられている。それが、後期高齢者支援金である。

現役世代が加入する健康保険組合の平均でいえば、自らが払う医療保険料のうち2割超を後期高齢者医療のために貢いでいる状態である。その現役世代の負担を軽減するのである。

後期高齢者支援金を減らすと、現役世代の医療保険料は減らせる。ただ、後期高齢者医療制度での財源が不足する。そこで、75歳以上の医療保険料を引き上げる。その保険料引き上げは、75歳以上の同世代の医療にまつわるリスクに見合ったものだから、当然ながら正当化できる。

これだけだと、子ども予算の追加財源は賄えない。そこで、現役世代で後期高齢者支援金のための負担を減らした分を、子育てにまつわるリスクに直面する現役世代の負担として子ども予算の追加財源に回す。

直近で、後期高齢者支援金は6兆円強にのぼる。子ども予算の規模に応じて、財源を捻出できる余地があるといえる。

子ども予算については、他の予算と同様に、恒久的な施策には恒久的・安定的な財源の確保が必要である。それこそ、親世代が子世代に果たす責任である。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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