子育て政策財源に、とんでもない筋違いの発想
3月末に公表された政府のこども・子育て政策には、数兆円の財源が必要であり、その大枠は、6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)までに示される予定だ。4月7日に「こども未来戦略会議」が発足し、議論が始まった。
政府部内では、健康保険に財源を求める考えが浮上しているようだ。しかし、これはとんでもない発想だ。およそ筋違いのところに負担を求めようとしている。
こども・子育て政策の内容を考えれば、その財源は税でなければならない。税は、特定の便益を得られるから負担するのではなく、国民の義務として負担しなければならないものだ。ところが、社会保険料は、これとは性格が異なる。
医療保険制度は、将来あり得る医療費支出のリスクを加入者でプールするための仕組みだ。したがって、ここで集められた保険料を他の用途に用いることは許されない。
「子育て政策によって将来若者が増えれば、医療制度を支えられる」と言われることもあるが、そうした論理は成り立たない。仮に子育て政策で出生率が上昇しても、その人たちが保険料を負担できるようになるのは、何十年も先のことだ。それに対して、医療費の支出は明日にでも起こることである。
医療保険の保険料を医療費以外の目的に使えば、医療保険制度を根底から破壊することになる。
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