子育て政策の為に「健康保険料」引き上げる大問題 筋違いのところに負担を求めようとしている

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これと同じような拠出金を健康保険にも導入するとした場合、どのような制度になるだろうか?

日本には、公的健康保険として、3つの制度がある。健康保険組合、国民健康保険、後期高齢者医療制度だ。

年金保険の場合と同じような制度にするのであれば、これらのうち、健康保険組合の事業主負担分の保険料率を引き上げるという形になるのだろうか?それとも、他の保険制度も対象とし、かつ本人負担分も対象とするのだろうか?

現時点では、こうした詳細については、何も分かっていない。ただ、このような方策によって、増税論議を避けつつ財源を確保することは、不可能ではない。

しかし、それは、以下で述べるような日本の財政が抱えている本当の問題を解決するものではない。むしろ、日本の財政制度が抱える歪みをますます拡大させるものだ。

財源問題に正面から取り組め

政府は、この機会に、増税問題に正面から取り組む必要がある。それができなければ、少子化対策の内容を見直すべきだ。

高齢化が進行することは避けられないので、医療、年金、介護の給付は増加せざるをえない。だから、社会保障制度そのものの財政が問題になる。消費税の増税は、避けて通れない課題なのである。

今回、増税を避けて財源を調達しても、一時的なことに過ぎない。それは、未来に対する責任を回避すること以外の何物でもない。

なお、少子化対策財源とは別に、防衛費増額の財源確保も緊急の課題だ。歳出改革と増税が本来あるべき財源だが、反対が強いため、決算剰余金の活用と税外収入の積立という「筋の悪い」財源が優先して検討されている。

4月6日に「防衛財源確保法案」が国会で審議入りしたが、これは、国有財産売却収入などを貯めるために「防衛力強化資金」を新設しようとするものだ。その一方で、増税や歳出削減については、議論がなされていない。

増税や歳出削減は、誰にとっても不愉快なテーマだ。できることなら避けたい。しかし、正面からそれに立ち向かうことこそが、政治の役割なのである。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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