日経平均が3万4000円以上になる条件とは何か PBR1倍割れ銘柄も減少、今後のカギを握るのは?

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もちろん、新規受注が停滞する中、過剰在庫が残存している可能性はある。だが在庫調整が一段と進展すれば、次は在庫を積み増す、つまり生産を増やす局面に入ると考えられる。そうなれば、S&P500のEPS(予想1株当たり利益)は過去の経験に沿って増加を遂げる可能性が高い。

また、アメリカはテック企業などサービス業の存在感が増し、製造業の存在感が低下していることは確かである。だが、株価との関係が深いのは相変わらず製造業であり、実際、現在もISM製造業景気指数とEPSの連動性は維持されている。

経済構造は変化しても、製造業が景気の波を作り出す構図に大きな変化はみられないということだ。今後、製造業のサイクルが上向き、それに伴ってEPSが増加に転じれば、アメリカ株は持続的な上昇が期待でき、それは言うまでもなく日本株を押し上げる要因になる。

日本株高を支える半導体にも明るい兆し

最後に、今回の日本株高の重要テーマの1つであった「半導体」に関して明るい兆しがあることにも触れておきたい。それは、半導体を中心とするIT関連財の生産集積地である台湾の輸出が持ち直していることである。

台湾経済部が6月20日に発表した5月の輸出受注は前年比マイナス17.6%と、3月のマイナス25.7%を底に2カ月連続で下落率が縮小した。

主因は輸出全体の6割強を占める電子製品と情報通信技術製品(ICT製品)の改善であり、電子製品はマイナス16.6%と3月のマイナス29.4%から持ち直し、情報通信技術製品もマイナス9.5%と3月のマイナス26.3%から改善した。こうした台湾の輸出底打ちは世界的なIT関連財の需給引き締まりを通じて日本企業にも恩恵を与えると考えられる。

これらを踏まえると、当面の日経平均は3万2000~3万3000円が中心レンジとなりそうだが、FRBの金融引き締め終了とアメリカ経済の再加速、そして世界的な半導体市況の改善が重なれば3万4000円も見えてくるだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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