定年後「幸せを感じる人」が60過ぎてやらないこと 和田秀樹さんが自身の60歳からの人生を考える

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幸い、わたしは映画製作というお金はかかりますが大好きなものがあり、映画づくりのことを考えているだけで幸せな気分にひたることができます。現実としては、あと数年で前期高齢者医療制度の対象となる65歳、つまり、正真正銘の高齢者となりますが、将来に対する不安はほとんどありません。

少なくとも医師という仕事はからだがもつかぎりは続けていくつもりですし、ほかにも生き延びる術をいくつかもっているつもりですので、そう簡単に食いはぐれてしまうことはないだろうと思っています。

そもそもわたしが医師を目指したのは、大好きな映画を撮るための資金稼ぎが目的で、大学教授や大病院の院長になろうと思って医師の道を選んだわけではありません。

ですから、ある意味ではいまある自分というのは、映画づくりを志した18歳のときの計算どおりだったともいえるわけで、映画づくりに幸福感をもち続けていたからこそ、医師以外にも多くの仕事に関わることができたのではないでしょうか。

しかし、ある日、からだが動かなくなって医師が続けられなくなったり、突然落ち目になって本がまったく売れなくなったりする日がくるかもしれません。

そうなったとしても、ずいぶん前からコンスタントに本を出し続けてきたので、高齢者関係だけではなく、脳の話とか、哲学的な話とか……売れなくなったら別のジャンルやテーマを考えていこうかなど、いろいろ手はあるはずだと思っています。たとえ映画を撮るための資金が稼げなくとも、なんとか食べていけるだけのベースがあればいいのです。

さまざまなことを試して、運がよければ、100万冊売れるかもしれないし、まったく売れないかもしれない。出版社から「もう和田さんの時代は終わったから、本は出せないよ」と言われるようになるかもしれないですが、いつまでも試し続けることをやめずに、ネタを探し求めていこうと思っています。

自分が心地いいと思うことだけを追求する

わたしは、灘校に在学していたときも東大でも、どちらかといえば落ちこぼれで、周りからうらやましいと思われるような人生を歩んできたわけではありませんでした。

2022年に、わたしの本『80歳の壁』が幸運にも年間ベストセラーになるなど大ヒットはしましたが、けっしてお金持ちになったわけでもありませんし、周囲の人から羨望を集めるような人間ではないと思っています。

しかし、最近になって高校や大学の同級生や世間の皆さんからは「なんにも縛られずに自由に生きていてうらやましい」と言われるようになりました。それは肩書や社会的地位よりも、自分のやりたいことをやる、イヤなことはできるかぎりしないということを徹底してきたおかげです。

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