JSRが仕掛ける「半導体材料の再編」を大胆予測! 政府系ファンドによる株式非公開化で大勝負

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まず考えられるのは「水平統合」のケースだ。つまり、JSRが強みを持つフォトレジストの同業との統合である。

フォトレジストとは、半導体の製造で重要な「露光」という工程で欠かせない液状の化学薬剤だ。半導体チップの土台となる円盤状のシリコンウェハーの表面にフォトレジストを塗布し、その上から光を照射することで回路を描いていく。

露光の方法は、半導体の高性能化(回路線幅の微細化)に伴い変わっていく。フォトレジストもそれに合わせて対応していく必要があるため、各社の技術力が試される。半導体材料の中でも、付加価値を比較的つけやすい分野だ。

世界のフォトレジスト市場では、JSRは27%のシェアを持つトップメーカー。JSRを含めた日本メーカー5社でシェア9割を握っている。

フォトレジストのシェア

再編相手の候補として最初に挙げられるのは、シェア2位の東京応化工業だろう。3位の信越化学工業などほかのメーカーと違い、東京応化の事業構造はシンプルで、ほぼフォトレジスト専業といえるからだ。

しかし、JSRと東京応化を合わせると、フォトレジストの世界シェアは6割に近づく。独占禁止法など競争法上の問題があり、統合がスムーズに進むかはわからない。

レゾナックや「垂直統合」はどうか?

次に考えられる再編相手は、露光ではないほかの半導体製造工程における材料メーカーだ。1つの材料だけを手がけるメーカーに比べて、複数の製造工程にまたがって材料を手がけるメーカーのほうが、収益性は高い傾向にある。

たとえば、昭和電工が日立化成を買収して発足したレゾナック・ホールディングス。半導体関連で世界シェアトップ級の材料を複数手がけている。同社は開示していないが、「半導体材料の中でも稼ぎ頭の製品では、利益率20〜30%の水準を確保しているのではないか」(同社関係者)。

対するJSRの半導体材料を含むセグメントの利益率は16%。両社が手を組めば世界シェア首位級の材料のラインナップが広がるうえ、収益性の向上も見込める。

だがレゾナックの髙橋秀仁社長は、「うちの買収は難しいだろう。半導体材料以外の事業もついてきちゃうから」と、以前から周囲に自嘲気味に語っているという。確かに、レゾナックは市況によって収益が大きく変動する石油化学事業の売上高構成比が約4割を占める。

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