背脂の歴史的高騰に見るラーメン業界の厳しい今 アブラマシマシどころじゃない未来はすぐそこ?

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新潟のご当地ラーメン「燕三条背脂ラーメン」の人気店「らーめん 潤」は、1店舗当たり1日で背脂を20〜30kgほど使っている。チェーン全体では200kg以上使うとのことだが、背脂の高騰をどう受け止めているのか。店主の松本潤一さんは次のように語る。

「コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ間の戦争、原油価格の高騰などで、輸入豚の供給量が減少していると考えています。それらの要因により、外国産から国内産へと原料がシフトされ、それによって背脂の価格が高騰していると思われます。以前の価格には戻るとは予想しにくく、ほかの材料においても価格は高騰しており、われわれの企業努力の範疇を超えていると感じています」(松本さん)

ラーメン
背脂が浮かぶ、「らーめん 潤」のラーメン(筆者撮影)

寒い新潟で、スープが冷めないようにふたをするかのように大量に背脂を入れるのが特徴のラーメン。背脂が命のラーメンで、当然量を減らすわけにはいかない。

「現状が続けば、その結果として、商品の値上げも検討せざるをえないと考えています。創業以来30年間、このような状況は初めてのことで、今後の行方を大変危惧しています。肉業者さんは長年の付き合いから、今はうちをかなり優先してくれています。われわれのラーメンは背脂がなければ作れません。どんなに値段が上がろうがこれだけは仕入れ続けようと思っています」(松本さん)

苦心し、工夫するラーメン店

松本さんは上記のように企業努力を語ったが、ほかの店でも、できる限りの工夫が行われているようだ。

たとえば冒頭で紹介した「麺浪漫」では、どんぶりの上から背脂を振りかける背脂チャッチャ系にはせず、背脂をスープと先に合わせる製法を採用し、ロスを出さないように工夫している。

「背脂を上からザルで振りかけると周りに飛び散ってしまってどうしてもロスが出てしまいますが、背脂をどんぶりに先に入れることでロスは出なくなります。背脂の量を減らすわけにはいきません。少しでも無駄のないようにしないと」(井上さん)

背脂の高騰
「麺浪漫」のラーメン。個人店ということもあり、大手チェーン以上に背脂の高騰に打撃を受けているようだ(筆者撮影)

背脂には等級があり、A脂(背脂のみ)、B脂(腹脂など周りの脂もついてくる)、C脂と3種類がある。「麺浪漫」ではA脂を仕入れるようにしているそうだが「処理の問題で時折周りに肉片などがついていることがあり、それも捨てずにうまく使うようにしています。少しでも背脂をたっぷり入れられるように、できることからやっていきたいですね」(井上さん)とのこと。涙ぐましい努力が行われているのだ。

ただ、それでも、大きな流れには抗いきれない面もある。

昔は捨てるのが当たり前で、大量に買うと感謝され、値引きもされる代物だった背脂だが、供給量が低下している現在では、むしろ「大量に注文すると迷惑がられる商品」になっている。代替品もないので、現状は価格高騰と戦い続けるしかない。

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