背脂の歴史的高騰に見るラーメン業界の厳しい今 アブラマシマシどころじゃない未来はすぐそこ?

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背脂ラーメンのブームは1980~1990年代の「環七ラーメン戦争」にさかのぼる。東武東上線・ときわ台駅と中板橋駅の間ぐらいにあった「土佐っ子」が大ブレーク。背脂をどんぶりの上からザルでチャッチャと振りかけるその光景から“背脂チャッチャ系”と呼ばれ、大人気になった。

そのほかにも恵比寿「らーめん香月」、千駄ヶ谷「ホープ軒」、浅草「弁慶」など、背脂ラーメンの人気店が各地に広がっていった。

そして、東京都豊島区の巣鴨エリアをはじめとする白山通り沿いは背脂ラーメンの聖地だった。1990年代から背脂ラーメンの名店3店舗「白山通り背脂御三家」が隆盛を極め、白山通り沿いには長い行列ができた。

昨年7月をもって背脂ラーメンの名店は巣鴨エリアから姿を消したが、「巣鴨から背脂ラーメンの灯を消したくない」と、今回話を聞いた「麺浪漫」が今年4月にオープンした。昭和感あふれるノスタルジックなラーメンが注目を集めるのと同時に、背脂ラーメンもリバイバルブーム的に再び注目を集めてきている。

ラーメンの歴史の中で受容され、評価を変えていった背脂。そのような状況のなかで、新型コロナや円安、人手不足などが一気に発生したのだ。

昨年春には「鶏油」でも高騰が

ところで、昨年の春ごろには「鶏油」でも高騰が起きていた。これは文字どおり、鶏から抽出される油のことで、近年ラーメン業界を牽引する横浜家系ラーメン(通称、家系ラーメン)に欠かせないものだ。

このときも筆者は複数の店主たちに取材したが「鶏油を作る人がいなくなってきている」「職人の高齢化に加え、外国人労働者がコロナで帰国してしまい、続かなくなっている現状がある」といった声を聞いた。

つまり、「鶏油」のときとまったく同じことが「背脂」でも起こっているのだ。職人の高齢化や外国人労働者頼みの経営は、多くの業界に共通する話なだけに、問題の根深さを感じさせる。

「『背脂ラーメンは安い』というイメージを払拭しないといけないですね」(井上さん)

現状では企業努力によってカバーされている面もあるが、長い目で見れば、どうしても消費者に負担がいくだろう。店側としても、背脂ラーメンのお店はもともと安価であることもウリだっただけに、厳しい展開が予想される。

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井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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