東京証券取引所が3月に、PBR(株価純資産倍率)が1倍割れの上場企業に改善策を開示・実行するように要請したことで、PBRに注目が集まっている。PBRは、企業の時価総額を会計上の純資産で割ることで求められる指標だ。
PBRが1倍割れの状態とは、純資産が仮に1億円だとすると、1億円に満たない割安な価格で購入できてしまうことになる。つまりPBR1倍割れの会社が解散して負債をすべて精算し、残った資産を株主に分配した場合、支払った株価より多くの純資産が株主の持ち分になると読み取ることができる。
ただし、資産の中にはすぐに換金できる「有価証券」のような資産もあれば、市場がなく換金性が低い「のれん」のようなものも計上されている。
調整PBRトップ300をランキング
そこで、「換金率」が高い資産項目のみを取り出し、調整したPBRのランキングを独自に作成した。具体的には「現預金」、「有価証券」、「投資有価証券」、「受取手形・売掛金」を換金しやすい資産として絞ったPBRを紹介したい。
この独自の調整純資産を、5月1日の終値から算出した時価総額と比較し、それぞれの項目を割合比較したものを付け加えて計算し、調整PBRトップ300をランキング化した。
再構築した各指標の定義は以下になる。
調整純資産=現預金+受取手形・売掛金+有価証券+投資有価証券-総負債
調整PBR=(時価総額(円))/(調整純資産(円))
データは金融を含む全上場企業の2023年5月1日現在の有価証券報告書から取得(連結決算実施会社は連結ベース)。
ランキング1位の川岸工業は時価総額を100%とした際に、現預金が81%、受取手形・売掛金は176%、投資有価証券は15%になる。一方、総負債は時価総額の60%にすぎない。換金しやすい資産から負債を差し引いた額は、時価総額の2倍以上になることがわかる。
このほかで、特徴的な企業をあげると、7位岩塚製菓は時価総額の2.5倍以上の有価証券を保有していて、これは提携している中国の旺旺集団の有価証券が多くを占める。
また、11位シャルレは保有する総負債を現預金ですべて清算したとしても、現預金だけで時価総額を超えるほど多くの現預金を保有していた。
換金性の高い資産を保有している企業は多くあるが、割安で放置されているのは一般的に、慢性的な赤字やコーポレートガバナンスの機能不足、オーナー経営で浮動株が少ないなどさまざまな理由がある。
ランキング上位にあるからといって、株価がすぐに上昇することは保証できないほか、引き続き割安で放置される可能性もあるので、注意してほしい。
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