ニデック永守会長、総会で耳目を集めた2つの発言 過大配当から後継問題まで「永守節」がさく裂

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「自分が作った会社だから自分のような経営をしてくれる人を10年間探していた。いなかったですね」。永守氏は外部人材を登用し続けてきた約10年間を噛みしめた。後継者に求める資質として挙げたのは「株価を上げてくれる人」。株価を上げるためには業績が伸びないといけないためだ。

「たとえ立派な人格でも株価を上げられない人より、少し変人でも株価を上げてくれる人が必要だ」というのは、いかにも永守氏らしい。今年4月には5人の副社長を決定。そのうちの1人が2024年4月に社長となる予定だ。小部氏は会長兼CEOに、永守氏は取締役グループ代表に就任する。その後はプロパーで入社した複数人による集団指導体制を敷く考えだ。

「(ニデックは)新しいマーケットに入っていって成長してきた。早く(新しいマーケットに)出たほうが勝つ。次の50年間も輝くように会社を持続させるには新製品を出していかないといかん。これが経営者、トップの重大な仕事。日頃の仕事は会長、社長がやってくれるけど、『炭鉱のカナリア』だけは僕がやらなあかん」

7月にニデックは創業50周年を迎える。次の50年を見据えて永守氏が今後も譲れないとしたのが「炭鉱のカナリア」役だ。「危機の察知役」という本来の意味よりも、成長性を嗅ぎつける役とでも言えばいいのだろうか。2019年4月と早い段階からEV(電気自動車)の駆動システムの量産を開始してきたように、新たな注力市場を定める役割は続けるという。

昭和の価値観がそのまま

つねに軽妙な語り口、かつ自分の言葉で株主の質問に答えた永守氏。だが、詳しい回答を避けるシーンもあった。

ニデックの2023年3月期業績は増収減益だった。車載事業を中心に757億円もの構造改革費用を計上したことで、営業利益は1000億円と前期比で41.3%のマイナスになった。構造改革費用には古い製造設備の除却損などが含まれるとみられる。

構造改革費用の詳細とEV向けの部品における今後の海外での展開について、株主が2つ質問した。永守氏はEV用部品を製造する際に必要な技術力のある会社を買収していると饒舌に語ったものの、構造改革費用の内容についての発言はなし。株主は「あとでIRに確認する」と引き下がったシーンがあった。

株主総会の様子をうかがう限り、ニデックの株主には「永守ファン」が多い。株主の厳しい指摘に対して永守氏が反論すると、会場に大きな拍手が響き渡る場面もあった。取締役再任への賛成率を見ても、永守氏は98.23%と非常に高い。一方で「ポスト永守」への不安は根強い。

「昭和の価値観をそのままにグローバル企業を牽引する経営者は、元気を失っている日本企業が多い今どき貴重。だがいずれ永守さんに万一のことがあったとき、買収企業のスピーディな再建に役立った『厳しさ』が徹底されるのか、その後の経営がどうなるかは想像がつかない」(総会に出席したある株主)

永守氏に経営を依存する状態は、有価証券報告書に「ガバナンスリスク」として記載されるほどだ。来年4月以降、新社長やその後の集団指導体制に普段の経営を任せて「カナリア」の役割に徹することが本当にできるのか。永守氏の意識の変革が新社長選定までに行われる必要がある。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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