南海電鉄サザン「通勤車と指定席連結」先駆者の今 大阪・なんば―和歌山市間の「着席需要」に照準

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「サザンプレミアム」の愛称が付いた12000系は2011年9月1日に運用を開始した。ステンレス製の車両で4両編成が2本在籍する。ノートパソコンが使える背面テーブルや、導入当時は前例があまりなかった全席電源コンセントを備える。車内設備としては防犯カメラ、堺市に本社を置くシャープの「プラズマクラスター」の装置なども取り付けた。

開発にあたっては女性社員を対象にアンケートを実施、「授乳スペースや子どもがぐずったときの対応スペース」「車外や隣席からのプライバシー保護」といった要望がそれぞれ多目的室と座席ヘッドレストの採用につながったという。

なんば―和泉中央間を走る泉北高速鉄道の座席指定列車「泉北ライナー」の12000系とは共通設計。泉北ライナーの12000系は金色に輝く車体が特徴で、期間限定でサザンの運用に充てられたことがある。

各社が狙う着席需要

関西の鉄道会社では一般車両に有料座席車両を連結する例が増えている。京阪電気鉄道は2017年に特急車両の8000系で「プレミアムカー」のサービスをスタート。2021年には快速急行の運用も担う3000系に拡大した。さらに2025年秋には3000系プレミアムカーを1編成あたり2両へと増強する方針だ。JR西日本は新快速に「Aシート」を導入。阪急電鉄にも2024年から京都線で座席指定サービスを始める計画がある。

サザンはこれらの先駆けとなってきた存在だけに10000系の老朽化は否めない。主電動機や制御器といった機器は四国号などに用いられた旧1000系から流用しており、相棒の7100系は1973年までに製造された大ベテランの車両だ。

南海電鉄運輸車両部課長補佐の久保薗隆祥さんは「取り替える部品がなくなってくるなかで更新していく必要がある。12000系と同じコンセプトにするのか、違う形式の特急車両にするのかを含め、さらに魅力的な車両になるような開発を検討したい」と話す。各社がプレミアム感を競う現在の感覚からすると、車内設備には時代遅れな印象があるかもしれないが、レトロな乗り心地をじっくり体験するならいまのうちと言えそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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